講演情報

[P-075]心臓ペースメーカを装着した在宅療養患者に心電図モニタリング下で超音波スケーラーを使用した症例

○水野 利恵1、深山 治久1、福井 智子1、高橋 賢晃1,2、戸原 雄1,2、加藤 真莉1、関 麻衣子1、真砂 功3 (1. 杉並区歯科保健医療センター、2. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック、3. 東京都杉並区歯科医師会)
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【緒言・目的】
 超音波スケーラーは短時間で効率良く歯石除去を行えるが,心臓ペースメーカを装着している患者への使用は,原則禁忌とされている。本症例は訪問診療に移行後も,患者が超音波スケーラーを用いた歯周治療を強く希望したので,歯科医療チームで協議した上で実施した。本発表には書面により本人の同意を得た。
【症例および経過】
 77歳女性,53歳時に筋ジストロフィーの診断を受け,車椅子で通院出来る施設を探し,当センターに外来通院を開始した。既往歴に完全房室ブロック,原発性骨粗鬆症,高血圧,2型糖尿病があった.要介護5,障害高齢者の日常生活自立度はランクBで認知機能は良好であった。残存歯は24歯で,叢生および歯根露出を認めた。23年間に及ぶ通院期間中,歯周病のため抜歯を要したが,処置時に血圧が高値になり,抜歯を中止したこともあった。その際,外来でのモニタリング環境や多数のスタッフにストレスを感じ,家庭内血圧(140mmHg)と診療室血圧(201/90mmHg)の差が大きいことも訴えていた。2年前に完全房室ブロックによる徐脈性心不全と診断され,ペースメーカ(VDD80~105/分)が植え込まれた。その際,通院負担を理由に訪問診療へ移行した。超音波スケーラーの使用は,患者の希望と診療負担の軽減を図り,ペースメーカへの影響を考慮した対応を検討した。そこで,処置前に歯科衛生士が単独で訪問してバイタルサインを測定し,続けて歯科医師および歯科麻酔医が訪れ,心電図モニタリング下で超音波スケーラーを用いて除石を行なうこととした。
【結果】
 診療中は常に自己心拍が維持され,ペースメーカの不具合を示すような心電図異常や自覚症状の訴えもなく,血中酸素飽和度は基準値内で,血圧はやや高値に推移した。歯科麻酔医からは,今後もバイタルサインのモニタリングを継続し,異常が認められた際は直ちに処置を中断するよう助言を受けた。幸い,訪問診療へ移行後,歯周病の顕著な進行は認めていない。
【考察】
 医療の進歩により,適切なリスク管理を行えばそれまで禁忌とされていた処置が安全に行えるようになってきた。本症例は心電図をモニタすれば,在宅でも安全に超音波スケーラーが使用でき,短時間で効率良く処置が行えた。同時に在宅でも外来と同等の歯周治療が受けられるという,患者の精神的安定にも寄与した。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)