講演情報

[P-077]精神科病院における入院患者の口腔環境の現状について

○尾崎 茜1、原田 真澄1、大久保 正彦2、森田 浩光3、竹之下 美穂4、大野 友久4、阪口 英夫4 (1. 医療法人永寿会シーサイド病院、2. 医療法人永寿会恩方病院、3. 福岡歯科大学成長発達歯学講座障害者歯科学分野、4. 医療法人永寿会陵北病院)
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【目的】 
 精神科病院に長期入院している患者では,口腔衛生状態の不良や摂食嚥下機能の低下が高頻度で認められる。精神疾患に伴う認知機能の低下,服薬の影響,セルフケア能力の低下,生活リズムの乱れなどが複合的に影響し,適切な口腔ケアが行われにくい。また,口腔環境の悪化は,誤嚥性肺炎や栄養状態の悪化など全身的な健康リスクにも直結するため,精神科病院における口腔管理の重要性は高い。本研究では,精神科病院入院中の患者を対象に,口腔内の状態および口腔機能の現状を把握し,定期的な口腔衛生指導や口腔機能訓練の効果を検討することを目的とした。
【方法】
 対象は,2025年6月から歯科受診を開始した入院患者26名とした。介入として,歯科医師および歯科衛生士が月1回の頻度で口腔衛生指導および口腔機能訓練を実施した。評価項目として,口腔内診査,口腔機能検査,そして口腔健康評価ツール(Oral Health Assessment Tool:OHAT)を用いた評価を行った。(医療法人永寿会シーサイド病院倫理委員会 承認番号 2026-001)
【結果と考察】
 結果は,舌圧の平均値は15.6kPa,口腔水分計ムーカスの平均値は24.0であった。また,口腔内細菌レベルの中央値は5.0であった。そして,口腔健康評価ツールOHATの中央値は7.0であった。本研究の結果から,口腔機能および口腔衛生が不良であると考えられる。特に精神疾患患者では,意欲低下やセルフケア能力の障害により,日常的な口腔清掃が十分に行われにくいことが報告されており,これが細菌レベルの上昇やOHAT高値に反映された可能性が高い。また,向精神薬の副作用として口腔乾燥が生じやすく,ムーカス24.0という低値は薬剤性の唾液分泌低下が影響したと考えられる。さらに,精神疾患患者では身体活動量の低下や咀嚼・会話の減少がみられ,舌筋の廃用性低下を招きやすい。舌圧15.6 kPaという低値は,こうした生活行動の制限と長期入院の影響を反映しているといえる。これらの複合的要因により,精神疾患患者は誤嚥性肺炎や栄養障害のリスクが高まることが知られており,歯科介入の重要性は大きい。今後は,継続的な口腔ケアと多職種連携により,口腔機能の改善と全身状態の維持を図る必要がある。(COI 開示:なし)