講演情報

[P-081]知的能力障害のある高齢者に対する個別的口腔衛生支援の効果

○縄田 和歌子1、松尾 幸子2、尾崎 茜3、森田 浩光2 (1. 福岡歯科大学医科歯科総合病院歯科衛生士部、2. 福岡歯科大学成長発達講座障害者歯科学分野、3. 医療法人永寿会シーサイド病院)
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【緒言・目的】知的能力障害のある高齢者では,理解力や手指動作の困難から口腔清掃が不十分になりやすく,歯周疾患の重症化を招きやすい。適切な口腔清掃を実現するには,本人の理解度に応じた支援と,介助を行う施設職員間での方法統一が重要である。今回,歯の動揺を指摘されたことを契機に歯科衛生士の指導により施設職員が介入を開始し,個別的支援を行ったことで清掃状態が改善した症例を経験したので,その経過を報告する。なお,本症例にあたり患者本人および代諾者へ説明を行い書面にて同意を得た。
【症例および経過】 施設入所中の60歳女性,療育手帳A(重度)。従来は歯ブラシによる自己清掃のみであったが,磨き残しが多く,歯肉の発赤や出血,歯間部のプラーク,さらに歯の動揺を認めた。歯の動揺の指摘を受け,歯科衛生士の指導により職員が清掃介助の必要性を認識し,支援体制の見直しを図った。本人には,イラスト入りの個人専用歯磨きチャートを作成し,視覚的に理解しやすい形で清掃手順を提示した。また,歯磨き指導の様子を動画撮影して職員間で共有し,介助手順を統一した。さらに,器具を従来の歯ブラシのみから職員による歯間ブラシでの補助清掃および本人への糸ようじの使用指導に拡大し,歯間部清掃を重点的に強化した。介入後,プラーク量は明らかに減少し,歯肉の発赤や出血が改善した。本人はチャートを見ながら一定の手順で歯磨きを行えるようになり,職員からは「指導動画のおかげで職員全員と共有ができ介助の統一ができた」との評価が得られた。
【考察】本症例では,歯科衛生士による歯の動揺の指摘および口腔衛生指導が支援体制見直しのきっかけとなり,職員の関心と支援意識を高める契機となった。本人の理解度に応じた視覚的支援と動画共有による介助方法の統一は,清掃行動の定着と口腔衛生状態の改善に有効であった。知的障害を有する高齢者に対しては,個別性に応じた支援と職員間の連携による継続的な支援体制の構築が口腔衛生の維持・改善に重要であると示唆された。(COI:開示なし・倫理審査対象外)