講演情報
[P-085]歯科訪問診療で脳血管障害患者に嚥下評価・義歯作製・嚥下訓練を一体で実施し嚥下機能の改善に寄与した一例
○樋口 和徳1、吉川 滿喜子1、首藤 崇典1、是本 夕華1、相羽 珠緒1、宮田 由紀子1、松尾 浩一郎2,1 (1. みんなの歯医者さん、2. 東京科学大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野)
【緒言・目的】
高齢者や脳血管障害患者では,舌運動の低下により舌口蓋接触が不十分となり嚥下障害が助長されることが多い。本症例では,嚥下内視鏡検査(VE)時に舌口蓋接触の不足を客観的に確認し,その所見をもとに舌接触補助構造を付与した上顎義歯を新製し嚥下訓練を行ったところ嚥下機能に改善が見られた。歯科訪問診療において嚥下評価・義歯作製・嚥下訓練を一体的に実施した介入が,嚥下機能の改善に寄与する可能性が示唆されたので報告する。
【症例および経過】
87歳男性,脳血管障害後に施設入所した。食意欲が強く,羊羹や饅頭などの嗜好食品を安全に摂取したいという希望から歯科訪問診療の依頼があった。初回VE時,咀嚼および食塊形成は比較的良好に保たれていたためペースト食から全粥・ソフト食へ食上げを行った。しかし,上顎義歯口蓋部への顕著な残渣付着を認め舌口蓋接触不全が示唆された。これらの所見を基に新義歯作製を計画し,試適時には軟性裏装材を用いて舌の機能運動を印記し,舌口蓋接触を補正する形態を新義歯に反映させた。完成後はパラトグラムにより舌接触分布を評価するとともに嚥下訓練を行った。義歯作製途中に蜂窩織炎により入院し食形態はミキサー食へ食下げとなったが,退院後,新義歯装着下で2回目のVEでは,口蓋部残渣の著明な減少を認め,全粥・ソフト食へ戻すことが可能となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,新義歯装着後のパラトグラムにおいて旧義歯と比較し,各発音に対して明瞭な舌接触が確認され,機能的な舌口蓋接触の獲得が示唆された。また,新義歯装着下での2回目VEでは,粘着性食品である饅頭摂取時にごく少量の残留を認めるのみで,口蓋部残渣はほぼ消失し,嚥下動態の改善が確認された。さらに,新義歯装着直後には一時的な咬合力低下を認めたものの,嚥下訓練の継続により咬合力は502.3 Nから745.7 N,舌圧は7.7 kPaから9.1 kPaへと旧義歯装着時を上回る水準に回復した。以上より,歯科訪問診療において嚥下評価・義歯作製・嚥下訓練を一体的に実施した介入は,嚥下機能向上に寄与する可能性が示唆された。
( COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
高齢者や脳血管障害患者では,舌運動の低下により舌口蓋接触が不十分となり嚥下障害が助長されることが多い。本症例では,嚥下内視鏡検査(VE)時に舌口蓋接触の不足を客観的に確認し,その所見をもとに舌接触補助構造を付与した上顎義歯を新製し嚥下訓練を行ったところ嚥下機能に改善が見られた。歯科訪問診療において嚥下評価・義歯作製・嚥下訓練を一体的に実施した介入が,嚥下機能の改善に寄与する可能性が示唆されたので報告する。
【症例および経過】
87歳男性,脳血管障害後に施設入所した。食意欲が強く,羊羹や饅頭などの嗜好食品を安全に摂取したいという希望から歯科訪問診療の依頼があった。初回VE時,咀嚼および食塊形成は比較的良好に保たれていたためペースト食から全粥・ソフト食へ食上げを行った。しかし,上顎義歯口蓋部への顕著な残渣付着を認め舌口蓋接触不全が示唆された。これらの所見を基に新義歯作製を計画し,試適時には軟性裏装材を用いて舌の機能運動を印記し,舌口蓋接触を補正する形態を新義歯に反映させた。完成後はパラトグラムにより舌接触分布を評価するとともに嚥下訓練を行った。義歯作製途中に蜂窩織炎により入院し食形態はミキサー食へ食下げとなったが,退院後,新義歯装着下で2回目のVEでは,口蓋部残渣の著明な減少を認め,全粥・ソフト食へ戻すことが可能となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,新義歯装着後のパラトグラムにおいて旧義歯と比較し,各発音に対して明瞭な舌接触が確認され,機能的な舌口蓋接触の獲得が示唆された。また,新義歯装着下での2回目VEでは,粘着性食品である饅頭摂取時にごく少量の残留を認めるのみで,口蓋部残渣はほぼ消失し,嚥下動態の改善が確認された。さらに,新義歯装着直後には一時的な咬合力低下を認めたものの,嚥下訓練の継続により咬合力は502.3 Nから745.7 N,舌圧は7.7 kPaから9.1 kPaへと旧義歯装着時を上回る水準に回復した。以上より,歯科訪問診療において嚥下評価・義歯作製・嚥下訓練を一体的に実施した介入は,嚥下機能向上に寄与する可能性が示唆された。
( COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
