講演情報
[P-089]全身状態の変化により義歯新製を断念し、旧義歯の修理対応を実施した症例
○吉永 義優1,2、内藤 徹2 (1. 医療法人社団徳治会 徳治会歯科医院宇城、2. 福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野)
【緒言】
超高齢社会において、全身疾患を多く抱えるフレイル期の患者への歯科介入は、QOL維持のために重要である。しかし、急激な全身状態の変化や医科からの制限により、当初の計画通りの完遂が困難なケースも少なくない。本症例では、義歯新製を目標としたものの、全身状態の悪化により旧義歯の修理対応にとどめた90歳男性の経過を報告する。
【目的】
主訴である歯肉腫脹の改善と義歯による咀嚼機能の回復を目標として治療計画を立案したものの、体調の悪化や入院期間の変更により計画の変更を余儀なくされた。今回は治療過程における医科連携や、介入の限界点について検討することを目的とした。
【症例および経過】
患者: 90歳、男性。主訴: 歯茎の腫れ、義歯使用困難。既往歴:脳梗塞、白内障、緑内障、右橈骨骨折。クロピドグレル(抗血小板薬)服用中。初診時所見: 上顎右側犬歯(#13)の動揺と歯肉腫脹を認め、同歯が唯一の義歯維持歯であった。下顎は前歯部が連結固定されているものの歯周組織状態は不良。臼歯部(#36, 37)には深在性カリエスを認めた。治療計画: 患者およびキーパーソンの同意を得て、#13, #36, 37の抜歯と上下義歯新製を計画した。まずは上顎義歯の口蓋被覆への耐容性を確認するため、旧義歯の修理から着手した。経過: 2025年11月に上顎義歯を修理し、使用感を確認。しかし、その後患者の体調が悪化し、予定していた下顎抜歯について医科より許可が下りなかった。また、退院時期の前倒しが重なり、最終的な義歯新製には至らず、修理義歯の使用による対応をもっていったんの治療終了となった。
【考察】
本症例において、#36, 37を抜歯し口腔清掃状態の改善、および義歯新製により、低下した咀嚼機能の回復を試みたができなかった。やむをえず義歯修理により使用可能な状態には至ったものの、食事量の改善という目に見える成果には繋がらなかった。これはフレイルが進行した高齢者においては、歯科的な機能回復のみならず、全身の予備能力が食事摂取能力に大きく影響することを示唆している。 また抜歯などの侵襲を伴う処置は、全身状態の変動に強く依存するため、治療のゴール設定を状況に応じて迅速に、かつ柔軟に治療方針の修正を行う判断力が、訪問歯科や高齢者診療において不可欠だと考えられた。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)
超高齢社会において、全身疾患を多く抱えるフレイル期の患者への歯科介入は、QOL維持のために重要である。しかし、急激な全身状態の変化や医科からの制限により、当初の計画通りの完遂が困難なケースも少なくない。本症例では、義歯新製を目標としたものの、全身状態の悪化により旧義歯の修理対応にとどめた90歳男性の経過を報告する。
【目的】
主訴である歯肉腫脹の改善と義歯による咀嚼機能の回復を目標として治療計画を立案したものの、体調の悪化や入院期間の変更により計画の変更を余儀なくされた。今回は治療過程における医科連携や、介入の限界点について検討することを目的とした。
【症例および経過】
患者: 90歳、男性。主訴: 歯茎の腫れ、義歯使用困難。既往歴:脳梗塞、白内障、緑内障、右橈骨骨折。クロピドグレル(抗血小板薬)服用中。初診時所見: 上顎右側犬歯(#13)の動揺と歯肉腫脹を認め、同歯が唯一の義歯維持歯であった。下顎は前歯部が連結固定されているものの歯周組織状態は不良。臼歯部(#36, 37)には深在性カリエスを認めた。治療計画: 患者およびキーパーソンの同意を得て、#13, #36, 37の抜歯と上下義歯新製を計画した。まずは上顎義歯の口蓋被覆への耐容性を確認するため、旧義歯の修理から着手した。経過: 2025年11月に上顎義歯を修理し、使用感を確認。しかし、その後患者の体調が悪化し、予定していた下顎抜歯について医科より許可が下りなかった。また、退院時期の前倒しが重なり、最終的な義歯新製には至らず、修理義歯の使用による対応をもっていったんの治療終了となった。
【考察】
本症例において、#36, 37を抜歯し口腔清掃状態の改善、および義歯新製により、低下した咀嚼機能の回復を試みたができなかった。やむをえず義歯修理により使用可能な状態には至ったものの、食事量の改善という目に見える成果には繋がらなかった。これはフレイルが進行した高齢者においては、歯科的な機能回復のみならず、全身の予備能力が食事摂取能力に大きく影響することを示唆している。 また抜歯などの侵襲を伴う処置は、全身状態の変動に強く依存するため、治療のゴール設定を状況に応じて迅速に、かつ柔軟に治療方針の修正を行う判断力が、訪問歯科や高齢者診療において不可欠だと考えられた。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)
