講演情報

[P-090]摂食嚥下訓練と上顎義歯一体型の軟口蓋挙上装置を併用した脳梗塞後遺症患者の1例

○野口 毅1、横山 滉介2、鎌田 有一朗1、石田 瞭3、小松 知子1 (1. 神奈川歯科大学 全身管理歯科学講座 障害者歯科学分野、2. 神奈川歯科大学 歯科診療支援学講座 歯科メンテナンス学分野、3. 東京歯科大学 口腔健康科学講座 摂食嚥下リハビリテーション研究室)
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【緒言・目的】
 脳血管疾患後遺症患者では,摂食嚥下障害および構音障害を呈することが少なくない。今回,脳梗塞後遺症患者に対し,嚥下訓練に加えて上顎義歯に軟口蓋挙上装置(PLP)を組み込んだ補綴装置を作製し,構音機能の改善ならびに体重増加を認めた1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 65歳,男性。脳梗塞,高血圧症,不整脈,内頚動脈狭窄症の既往あり。2024年3月に脳梗塞を発症し入院,同年8月に退院した。退院後,運動性失語および軽度の右不全麻痺を認めていた。2025年1月,「食べ物がのどに詰まる」を主訴に,かかりつけ歯科医院より当科を紹介受診した。初診時BMIは19.3kg/m²,食形態は米飯・刻み食を摂取していた。上顎は全部床義歯,下顎は部分床義歯を使用しており,残存歯にう蝕を認めた。
 初診時嚥下機能評価では,RSST2回/30秒,MWST3,開鼻声は中等度,会話明瞭度は3であった。嚥下内視鏡検査(VE)では発声時に軟口蓋挙上不良を認め,水分(とろみなし)ではムセを認めたが,軽度とろみ付与により消失した。刻み食では咽頭残留を認めたが,顎引き嚥下および水分(軽度とろみ付与)との交互嚥下で残留は軽減した。
 以上より,嚥下機能低下および軟口蓋挙上不全と診断し,主治医およびかかりつけ歯科医院と情報共有を行いながら訓練を開始した。間接訓練としておでこ体操およびメンデルソン手技を,直接訓練として複数回嚥下,交互嚥下,水分への軽度とろみ付与を指導した。
 訓練継続中に構音機能改善の希望があり,VEにて「ア」発声時に軟口蓋挙上不全を認めた一方,視診では軟口蓋の長さが十分であったためPLPの適応と判断し,同年9月よりPLPを組み込んだ上顎義歯の作製を開始した。その結果,同年10月にはBMIは20.4kg/m²へ増加し,装置装着1か月後(2026年1月)には会話明瞭度は2へ改善し,VEでも装置装着下で軟口蓋の挙上量の増加を認めた。なお,本報告の発表に際し患者本人より文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,嚥下機能評価に基づく訓練を先行し,その後に構音障害に対する補綴的介入を段階的に行うことで,構音機能の改善が得られたと考えられた。また,訓練を中心とした包括的な対応により,経口摂取の継続および体重増加につながった可能性が示唆された。
( COI開示:なし)
(倫理審査対象外)