講演情報
[PSY-3]のどフレイルと嚥下機能低下症
○熊井 良彦1 (1. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野)

【略歴】
平成11年3月31日 熊本大学医学部医学科卒業
平成11年 5月1日 熊本大学医学部付属病院・研修医
平成11年10月1日 大阪赤十字病院耳鼻咽喉科・気管食道科・医員
平成13年10月1日 熊本大学医学部付属病院・医員
平成19年4月1日 国Harvard Medical School, Institute of Laryngology & Voice Rehabilitation, Research Fellow (Professor Steven Zeitels研究室)
平成21年 4月1日 熊本大学耳鼻咽喉科頭頸部外科 助教
平成29年11月1日 同上准教授
令和2年1月1日 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 教授
令和5年4月1日 長﨑大学病院嚥下障害治療センター長併任
平成11年3月31日 熊本大学医学部医学科卒業
平成11年 5月1日 熊本大学医学部付属病院・研修医
平成11年10月1日 大阪赤十字病院耳鼻咽喉科・気管食道科・医員
平成13年10月1日 熊本大学医学部付属病院・医員
平成19年4月1日 国Harvard Medical School, Institute of Laryngology & Voice Rehabilitation, Research Fellow (Professor Steven Zeitels研究室)
平成21年 4月1日 熊本大学耳鼻咽喉科頭頸部外科 助教
平成29年11月1日 同上准教授
令和2年1月1日 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 教授
令和5年4月1日 長﨑大学病院嚥下障害治療センター長併任
高齢者の誤嚥性肺炎が国家的な喫緊の課題であることは論を俟たない。重要なのは、誤嚥性肺炎に至る前の予兆を敏感に捉え、早期に対応することであり、これは高齢者の健康長寿延伸を目指すうえで医療全体に求められる役割である。誤嚥性肺炎は突然発症するものではなく、本人の自覚のないまま進行する咽喉頭の運動・感覚機能の低下が嚥下機能低下を招き、症状が顕在化した時点では、すでに生活機能障害、すなわち食形態の制限や誤嚥性肺炎の発症につながる嚥下障害に至っていることが多い。このような嚥下障害の予兆としての、口腔機能のみならず、加齢に伴う咽喉頭運動・感覚機能の低下をできるだけ早期かつ正確に捉え、介入することは誤嚥性肺炎予防の観点から極めて重要である。しかし現時点では、この状態に対する明確な疾患概念は確立されていない。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、本問題に耳鼻咽喉科医がこれまで以上に積極的に関与する必要があると考え、この未定義の領域に対して学会を挙げて取り組んでいる。具体的には、加齢に伴う軽微な嚥下時の違和感や嗄声などを自覚する未病の状態を「のどフレイル」と定義し、さらに「70歳以上の高齢者において、嚥下内視鏡検査で異常所見を認めるものの、生活機能障害(食事形態の制限または誤嚥性肺炎の発症)を伴わない咽喉頭感覚・運動機能低下の状態」を「嚥下機能低下症」と新たに定義し現在も協議中である。「のどフレイル」は未病の状態であり機能障害そのものではないが、加齢による全身予備能の低下に伴い、誤嚥を起こしやすい状態が自覚なく生じている点は看過できない。このような予備能低下の状態に、疲労や上気道感染などの身体的ストレスが加わると、咽喉頭感覚・運動機能低下から「嚥下機能低下症」、さらに生活機能障害を伴う「嚥下障害」へと進行し、最終的に誤嚥性肺炎へ至る危険性が高まる。したがって、この負のスパイラルに陥ることを防ぐためには、嚥下機能低下の予兆を的確に捉え、早期に介入することが重要である。本概念の確立にあたっては、口腔期嚥下機能の低下に着目し、「オーラルフレイル」および「口腔機能低下症」という概念を提唱・評価し、社会実装をすでに進めてきた歯科領域の取り組みと歩調を合わせ、互いに協議を重ねながら検討を進めるべきと考えている。また予兆を的確早期に捉えるための方策として、高齢者の家族や多職種が広く実施可能な、簡便で信頼性の高い嚥下機能評価法とその基準の確立が求めらる。現在、医科歯科多施設での合同の前向き研究を通じて、その簡便な検査法に関する妥当性の検証を計画している。その社会的認知を高めるとともに、誤嚥性肺炎の予兆に対する早期発見・早期介入を、多職種および関連診療科が連携して横断的に推進することで、軽症嚥下障害の重症化予防につながり、ひいては誤嚥性肺炎の予防および健康増進に大きく寄与することが期待される。
