講演情報

[SCS2]臨床研究を始める前に知っておきたい研究倫理の基礎知識

○高野 忠夫1 (1. 東北大学研究推進・支援機構 特任教授 ヒューマン・リサーチ・プロテクションズセンター/東北大学病院臨床研究監理センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【職歴:臨床研究・研究倫理】
1990年東北大学医学部卒業。産婦人科医としての臨床経験を経て、2010年より東北大学未来医工学治療開発センター副部門長として研究開発管理に従事。2012年には東北大学病院臨床研究推進センター特任教授に就任し、臨床研究のプロトコル作成支援を主導した。 2016年からは同病院臨床研究監理センター副センター長および病院長特別補佐(研究倫理)を務め、組織全体の倫理遵守体制を確立。2025年1月、東北大学ヒューマン・リサーチ・プロテクションズ(HRP)センター長に就任し、全学の倫理審査業務および臨床研究中核病院のマネジメントを統括している。

【専門・資格】
専門は臨床試験、婦人科腫瘍学。日本産科婦人科学会認定医、がん治療認定医等の資格を有し、長年にわたり被験者保護部門長として臨床研究の倫理的・科学的妥当性の確保に尽力している。
【はじめに】 近年、歯科診療に携わる先生方から提出された素晴らしい臨床研究が、「倫理審査未受審」を理由に演題却下となるケースが増加している。日々の診療から生まれる貴重な臨床知見が、たった一つの手続きの不備によって共有されなくなることは、発表される先生方にとって痛手であるだけでなく、学会全体にとっても非常に大きな損失である。本講演は、こうした「もったいない」演題却下を未然に防ぎ、日常臨床の成果を安心して学会発表へと繋げていただくことを目的としている。
【生命医学系指針の境界線とは】 多くの先生方が直面する最大の壁が、「自分の発表が『生命・医学系指針』の適用対象(倫理審査が必要な研究)になるのかどうか」という疑問である。通常診療の範囲内の1〜数症例の「症例報告」であれば原則として審査は不要とされるが、複数症例の比較検討や、既存カルテの遡及的解析、新たな材料・治療法の有効性評価などは「研究」とみなされ、指針が適用される。本講演では、難解な指針の条文を読み解くのではなく、歯科診療の現場に即した、グレーゾーンともいえる「症例報告と研究の境界線」を、できる限り分かりやすく分けることを目指し解説する。
【歯学研究者によくある事例紹介】 「当院の義歯患者50名の咀嚼機能評価をまとめたい」「訪問歯科診療における口腔ケアの介入効果を発表したい」など、臨床現場でよくある具体的なケーススタディを提示する。どの段階で倫理審査委員会の承認が必要となるのか、また個人情報保護の観点から、研究対象者からのインフォームド・コンセントをどのように取得すべきか、実践的かつ具体的な対応フローを共有する。
【おわりに】 本講演を通じて、倫理審査に対する心理的ハードルを下げ、演題却下防止のための道筋を理解していただくことにより、先生方の価値ある臨床知見を正しく、堂々と世に出すためのサポートとなれば幸いである。