講演情報

[SCS3-1]老健事業から見えた口腔・栄養連携の実践課題

○水谷 慎介1 (1. 九州大学)
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【略歴】
2010年 北海道大学歯学部歯学科 卒業
2010年 岡山大学病院 研修医
2014年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野 早期修了
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野 助教
2016年 福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野 助教
    福岡歯科大学医科歯科総合病院 訪問歯科センター 兼任
2018年 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター
     同大学院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野 准教授
(現在に至る)
高齢者の生活機能を維持・向上させるためには、リハビリテーション、栄養、口腔の三領域が相互に作用することが不可欠である。いかに質の高いリハビリテーションが提供されても、十分な栄養摂取が伴わなければ筋肉量の維持は困難であり、さらに口腔機能の低下は食事摂取そのものを阻害し、栄養状態の悪化を招く。このように三者は独立した要素ではなく、相互補完的に機能することで初めて効果を発揮する。こうした背景を踏まえ、令和6年度介護報酬改定では、リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組が制度上も明確に位置付けられ、多職種による包括的な支援が強く求められることとなった。一体的取組とは、各専門職が情報を共有しながら個別支援計画を共同で立案・実施し、評価と改善を繰り返すプロセスであり、支援の質向上と効率化の両立が期待されている。しかしながら、令和7年度老健事業において歯科医療機関を対象に実施した郵送調査からは、制度の理念と現場の実態との間に乖離が存在することが明らかとなった。リハビリテーション専門職や管理栄養士との連携について「困難を感じる」と回答した歯科医療機関は約3割に上り、その主な理由として「職種間で話し合う機会がない」が最多であった。加えて、「どの患者に連携が必要か判断が難しい」「専門用語や評価指標が理解しにくい」といった声も認められた。これらの結果は、知識不足よりも、連携を支える仕組みや接点の不足が本質的な障壁であることを示唆している。今後は、定期的なカンファレンスの開催や情報共有ツールの整備、連携対象患者の明確化、共通言語の構築といった実践的な基盤整備が不可欠である。また、地域や施設特性に応じた柔軟な連携モデルの提示も求められる。本シンポジウムでは、これらの調査結果を基に、歯科医療機関と管理栄養士・リハビリテーション専門職との連携における具体的課題を整理するとともに、現場で実践されている良好事例を共有する。さらに、在宅医療を含む多様なフィールドにおける連携のあり方を展望し、明日からの実践に資する具体的方策について議論したい。