講演情報

[SCS5-2]歯科未設置急性期病院における口腔ケアラウンドの構築と地域歯科連携の可能性

○尾崎 由衛1 (1. 歯科医院丸尾崎)
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【略歴】
平成14年 広島⼤学⻭学部⻭学科卒業
平成18年 広島⼤学⼤学院医⻭薬学総合研究科展開医科学専攻修了
平成18年 九州⻭科⼤学 摂⾷機能リハビリテーション学分野 助⼿
平成19年 同 助教
平成23年 済⽣会⼋幡総合病院 ⻭科医⻑
平成28年 同 ⻭科部⻑
平成29年 国⽴病院機構 ⻄別府病院 ⻭科医師
令和元年7⽉ 医療法⼈丸尾⻭科医院 ⻭科医院丸尾崎 ⻭科医師
令和5年1⽉ 医療法⼈丸尾⻭科医院 ⻭科医院丸尾崎 理事⻑
⽇本⽼年⻭科医学会 認定医・専⾨医・代議員
摂⾷機能療法専⾨⻭科医師(⽇本⽼年⻭科医学会)
⽇本摂⾷嚥下リハビリテーション学会認定⼠・代議員
福岡摂⾷嚥下サポート研究会 世話⼈
【背景】
高齢期における口腔機能の維持がQOL向上に直結するという認識は、口腔機能低下症の概念の浸透とともに広く周知されつつある。歯科外来においては、主訴の治療完了後に口腔機能管理へ移行する体系的なアプローチが可能である。一方で、入院や療養などにより生活の場を移す高齢者の中には、歯科受診が中断・停滞している者も存在し、これらへの介入はいまだ困難を伴うことが多い。
【病院介入の背景と目的】
演者は、令和6年度診療報酬改定において「リハビリテーション・栄養・口腔」の一体的な取り組みが評価されたことを契機に、近隣の歯科未設置急性期病院において口腔ケアラウンドを開始した。本取り組みの目的は、口腔衛生状態の改善・維持を図るとともに、入院患者の口腔内トラブル(疼痛、感染、粘膜疾患など)の早期発見・予防、適切な経口摂取を支える栄養サポートに加え、歯科とつながりのない入院患者に対し、専門的なスクリーニングを通じて適切な歯科支援へとつなぐ導線を構築することである。
【ラウンドの実際と抽出された課題】
対象者は、入院後に病棟看護師が行うスクリーニングにより抽出し、週1回、歯科医師(演者)が当日の担当者(看護師、言語聴覚士、管理栄養士のうち1名)とともに病棟でラウンドを行っている。ベッドサイドにて口腔内診査を実施するとともに、提供されている病院食の食形態と口腔環境・口腔機能との適合性についても確認している。
ラウンドを通じて、歯科受診に至らない背景には、患者本人の心理的障壁、移動手段や経済的制約といった社会的要因、さらに自覚症状を訴えにくい身体状況など、複合的な要因が関与していることが明らかとなった。また、開始時に実施した看護師へのアンケートでは、日常的な口腔ケアに対する不安や自信のなさが示された一方で、歯科専門職による介入や連携を望む声は多く、院内における歯科ニーズの高さが改めて確認された。
【開業歯科医の役割と展望】
病院歯科に在籍していた際には、病棟で生じる歯科治療ニーズに即時対応が可能であったが、週1回のラウンド体制では、その場で把握された治療ニーズに即応できず、後日の対応を要する点が課題である。また、日々行われている口腔ケアに関する疑問への支援も週1回に限られることに、もどかしさを感じる場面もある。
しかしながら、定期的な関わりを継続することで口腔ケアへの意識が向上しているとの声も聞かれ、現場力の底上げに一定の寄与ができていると考えられる。さらに、ラウンドで把握した歯科ニーズは退院時サマリー等に反映し、次の療養・生活の場へと継承する仕組みを整えている。
歯科未設置病院において、地域の開業歯科医がラウンドに関わることは、病院スタッフの負担軽減と退院後のシームレスな口腔管理の実現に寄与する。本取り組みが歯科受診の端緒となり、地域全体で必要な支援を届ける一助となることが期待される。