講演情報

[SL2]いかに根面う蝕に対応するか:研究から臨床へのアプローチ

○林 美加子1 (1. 国立大学法人大阪大学)
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【略歴】
1987年3月 大阪大学歯学部歯学科卒業
1998年2月 博士(歯学)(大阪大学)
2005年10月 大阪大学歯学部附属病院・講師
2011年3月 大阪大学大学院歯学研究科・准教授
2012年4月-現在 大阪大学大学院歯学研究科・教授
2020年4月-2024年3月 大阪大学歯学部附属病院・病院長
2025年4月-現在 大阪大学 理事・副学長

【資格・学会活動】
日本歯科保存学会(前理事長・日本歯科専門機構 歯科保存専門医)
日本歯内療法学会(指導医)Japanese Association for Dental Research: President 日本学術会議連携会員(第26期)令和7年度日本歯科医学会賞
 高齢者の残存歯数の増加に伴い、根面う蝕への対応は臨床の喫緊の課題である。
 その根面う蝕への対応を考える場合に、う蝕病変の特徴を理解することが不可欠である。臨床では対象とする病変の深さと活動性を判定して「非切削でのマネジメント」か「切削修復」かを選択しており、その判定には、う蝕表層の硬さや性状を基準としている。周知のとおり、咬合面の象牙質う蝕は細菌感染の前縁から軟化開始部にかけて急激に硬くなり、切削範囲の目安は明らかであるが、根面う蝕ではう蝕表層から歯髄にかけて一様に硬さが低下しており、硬さによるう蝕除去領域の判断が難しい。そして、根面う蝕の硬さは「hard」「leathery」「soft」に分類され、非活動性う蝕病変には「hard」と「leathery」が混在しており、その判断は臨床医の主観に左右されることもわかってきている。従って、活動性根面う蝕の対応にあたっては、患者のう蝕リスクに応じたホームケアとプロフェッショナルケアを適用して「soft」「leathery」の活動性う蝕病変を「hard」「leathery」の非活動性う蝕病変に導くことが基本である。すなわち、う蝕リスクを低くコントロールすることで、病変を時間経過と共に評価したうえで、切削介入の要否を判定することが実践的である。
 
 以下に根面う蝕管理の基本的な考え方を挙げる。
○患者個人のう蝕リスクに応じた、ホームケアおよびプロフェッショナルケアによるう蝕予防プログラムを提供する
○患者個人ののう蝕リスクに応じたリコール間隔を設定し、リコールごとの再評価で予防プログラムとリコール間隔を見直す
○成人のホームケアでは1500ppmF歯磨剤での1日2回ブラッシングを基本とし、必要に応じてフッ化物製剤のプロフェッショナルケアを加える
○根面う蝕を早期に発見し、フッ化物局所塗布で長期に管理する

 日本歯科保存学会は2019年に「根面う蝕の診療ガイドライン」を上梓し、非切削でのマネジメントとして、以下の3つの戦略を提示した。
①フッ化物配合歯磨剤とフッ化物配合洗口剤の併用:②高濃度フッ化物配合歯磨剤(5000ppmF)の使用:③38%フッ化ジアンミン銀製剤の塗布
 これらは、それぞれに異なるう蝕進行抑制効果を示すことから、臨床適応に際しては患者個人のう蝕リスク、セルフケアのスキル、そしてコスト等を勘案して選択することになる。
 さらに、根面う蝕の修復にあたっては、防湿が可能な場合には物性と審美性に優れる接着システムによるコンポジットレジン修復を実施し、防湿が困難な場合にはグラスアイオノマーセメントが第一選択である。その場合、抗う蝕性イオンが持続性に放出する機能性材料が有用であることが研究成果として示されている。
 本講演では根面う蝕の診断から予防・治療まで、最新の研究知見も踏まえながら臨床的対応について包括的に考察してまいりたい。