講演情報
[課題1-2]嚥下障害を主訴に訪問歯科診療を受けた要介護高齢者の抗精神病薬の使用状況調査
○田中 信和1、濵田 雅弘1、濱田 理英1、中本 文1、尾花 綾1、藤井 菜美1、野原 幹司2、阪井 丘芳2 (1. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部、2. 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学講座)
【目的】
ポリファーマシーへの対応は,近年の高齢者医療において重要な課題として位置づけられている。なかでも薬剤有害事象としての嚥下障害は,要介護高齢者においても適切な介入により改善が期待できる数少ない障害である。そのため,生活期の嚥下リハや食支援に関わる歯科医療者においても,薬剤性嚥下障害に対する理解と対応が求められる。嚥下障害の原因となり得る薬剤は複数知られているが,そのなかでも抗精神病薬はドパミンD₂受容体拮抗作用により錐体外路症状などを生じ,誤嚥性肺炎のリスクを高めることが知られている。さらに抗精神病薬は認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して処方されるため,使用頻度が高い注意すべき薬剤と考えられる。しかし,生活期の要介護高齢者における抗精神病薬の処方の種類や割合については十分に明らかになっていない。そこで本研究では,当該薬剤の処方状況と嚥下機能への影響を調査した。
【方法】
2023~2025年に嚥下障害を主訴に訪問歯科診療を実施した要介護高齢者140名(平均83.9歳、男女比65:75)を対象とした。初診時の処方内容を確認し,抗精神病薬の①処方割合と種類,②処方されたタイミング,③対診による休・減薬や変更の有無とその結果を調査した。
【結果と考察】
140名中27名(19%)で抗精神病薬が処方されており,処方医は特定の医療機関への偏りは認めなかった。処方薬はリスペリドンが最多で,クエチアピン,オランザピンを含むBPSDに使用される3剤で全体の76%を占めた。処方のタイミングは入院等の療養環境の変更時が最も多く(12名、44%),いずれもBPSDに対して処方されていた。対診の結果,14名で調整が実施,その内13名で休・減薬が維持され,8名で嚥下機能の改善を認めた。
本調査では,抗精神病薬の処方の約半数が入院時のBPSD発症を契機に開始・継続されていた。多くは休・減薬が可能であったことから,退院後の住み慣れた生活環境に戻った段階で処方見直しの余地があることが示唆された。休薬により変化を認めない症例もあったが,不必要な処方削減の観点からは意義があると考えられた。以上より,生活期においても処方薬剤に注意を払うことが,嚥下障害の改善,ひいてはポリファーマシー対策に有効であることが示された。
(COI開示なし、大阪大学歯学部倫理委員会承認番号H30-E45)
ポリファーマシーへの対応は,近年の高齢者医療において重要な課題として位置づけられている。なかでも薬剤有害事象としての嚥下障害は,要介護高齢者においても適切な介入により改善が期待できる数少ない障害である。そのため,生活期の嚥下リハや食支援に関わる歯科医療者においても,薬剤性嚥下障害に対する理解と対応が求められる。嚥下障害の原因となり得る薬剤は複数知られているが,そのなかでも抗精神病薬はドパミンD₂受容体拮抗作用により錐体外路症状などを生じ,誤嚥性肺炎のリスクを高めることが知られている。さらに抗精神病薬は認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して処方されるため,使用頻度が高い注意すべき薬剤と考えられる。しかし,生活期の要介護高齢者における抗精神病薬の処方の種類や割合については十分に明らかになっていない。そこで本研究では,当該薬剤の処方状況と嚥下機能への影響を調査した。
【方法】
2023~2025年に嚥下障害を主訴に訪問歯科診療を実施した要介護高齢者140名(平均83.9歳、男女比65:75)を対象とした。初診時の処方内容を確認し,抗精神病薬の①処方割合と種類,②処方されたタイミング,③対診による休・減薬や変更の有無とその結果を調査した。
【結果と考察】
140名中27名(19%)で抗精神病薬が処方されており,処方医は特定の医療機関への偏りは認めなかった。処方薬はリスペリドンが最多で,クエチアピン,オランザピンを含むBPSDに使用される3剤で全体の76%を占めた。処方のタイミングは入院等の療養環境の変更時が最も多く(12名、44%),いずれもBPSDに対して処方されていた。対診の結果,14名で調整が実施,その内13名で休・減薬が維持され,8名で嚥下機能の改善を認めた。
本調査では,抗精神病薬の処方の約半数が入院時のBPSD発症を契機に開始・継続されていた。多くは休・減薬が可能であったことから,退院後の住み慣れた生活環境に戻った段階で処方見直しの余地があることが示唆された。休薬により変化を認めない症例もあったが,不必要な処方削減の観点からは意義があると考えられた。以上より,生活期においても処方薬剤に注意を払うことが,嚥下障害の改善,ひいてはポリファーマシー対策に有効であることが示された。
(COI開示なし、大阪大学歯学部倫理委員会承認番号H30-E45)
