講演情報

[SY1-2]認知症診断時における病院歯科の役割と課題

○中村 純也1 (1. 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【略歴】
2009年3月 大阪大学歯学部卒業
2009年4月 神戸市立医療センター中央市民病院 歯科口腔外科 初期研修
2011年4月 神戸市立医療センター西市民病院 歯科口腔外科 後期研修
2014年4月 医療法人社団関田会ときわ病院 歯科口腔外科 医長
2017年4月 同 摂食機能支援センター副センター長/NSTディレクター
2022年4月 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部(~現在)
2024年3月 神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学専攻修了
2025年4月 国立長寿医療研究センター 摂食嚥下・排泄センター口腔機能マネジメント研究室 室長(~現在)

【所属学会】
日本老年歯科医学会、日本口腔外科学会、日本歯科麻酔学会、日本有病者歯科医療学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本栄養治療学会
 認知症の有病者数は2022年時点で約443万人、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment、以下MCI)も含めると1000万人を超えると推計され、今後も増加が見込まれている。認知機能低下に伴い口腔環境が悪化することは広く知られているが、認知症診断時から診断後にかけた医科歯科連携はまだまだ十分とは言えない。
 そこで我々はまず、認知症診断時におけるかかりつけ歯科の有無の実態を調査した。もの忘れセンター初診患者814名を対象とした検討では、かかりつけ歯科がない者は認知症群34.4%、MCI群29.1%、正常認知機能群15.2%であり、認知機能低下とともに有意に増加した。さらに年齢、男性、教育年数とともに認知機能低下が関連因子として抽出され、認知機能低下自体が歯科受診継続の障壁となる可能性が示された。すなわち、認知症診断時点ですでに口腔健康管理から離脱している患者が一定数存在することが明らかとなった。
 次に、この課題への対応として、オーラルフレイル調査を組み合わせたもの忘れセンターと歯科の新たな連携を検討した。初診患者877名を対象にオーラルフレイルおよびかかりつけ歯科の有無を評価した結果、オーラルフレイル38.5%、かかりつけ歯科なし30.0%、両者を併せ持つハイリスク群は89名(10.1%)であった。この89名に対し、電子カルテを介した主治医との情報共有に加え、認知症診断結果説明日に歯科医師による簡易口腔内評価および歯科受診勧奨を試みた。48名に実施し、そのうち39名に歯科治療の必要性を認めた。一方で、来院時間の不一致や調整困難、患者の拒否などにより41名には実施できず、さらには、歯科医師単独の受診勧奨ではその後の受診行動に必ずしも結びつかない可能性も示された。
 以上より、認知症診療の初期段階には口腔管理の中断と歯科介入ニーズの高い集団が存在すること、さらに歯科単独による受診勧奨のみでは不十分であり、例えば周術期等口腔機能管理のような医科主導の制度的な連携枠組みが必要である可能性が明らかとなった。認知症診断時は口腔健康管理再開の重要な契機であり、認知症疾患医療センターを有する病院歯科には、院内連携から地域連携に至るまでその中核的役割を担うことが期待される。