講演情報

[SY2-2]歯科訪問診療を支える後方支援機能の構築

○廣瀬 知二1 (1. 医療法人伊東会 伊東歯科口腔病院)
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【略歴】
1985年 北海道医療大学歯学部卒業
1989年 広島大学大学院歯学研究科(歯科理工学専攻)修了
一般歯科勤務を経て、1994年より(医)康和会にて歯科訪問診療に従事
2015年より伊東歯科口腔病院訪問診療部長
歯学博士、介護支援専門員、日本歯科医療管理学会認定医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
 2040年には団塊ジュニア世代が後期高齢者となり、在宅療養や介護を必要とする高齢者はさらに増加すると予測される。これに伴い、歯科訪問診療への社会的期待は一層高まる。地域包括ケアシステムにおいて、摂食嚥下機能の維持・改善、誤嚥性肺炎の予防、療養生活の質の向上に歯科が果たす役割は極めて大きい。しかし現状では、訪問診療を担う歯科医療機関の地域差や人材不足、診療体制の脆弱さ、設備や診療時間の制約などが重なり、地域における歯科医療提供体制は十分に整っているとはいえない。また、医科・介護・福祉との情報共有や役割分担も不十分であり、地域として患者を継続的に支える体制整備はなお不十分である。
 現在主流の“1医療機関完結型”の歯科訪問診療は、診断から治療、摂食嚥下障害への対応、継続的な口腔機能管理までを単独で担う必要がある。しかしこのモデルでは、患者数増加への対応力に限界があるだけでなく、嚥下機能評価や嚥下補助装置の製作・調整など、高度な専門医療の提供が難しい。急変時対応、入退院時の連携、介護現場との調整、主治医や病院歯科口腔外科との情報共有までを単独で担うことは現実的ではなく、個々の医療機関の努力だけでは解決できない構造的な課題である。すなわち、役割分担を前提とした医療提供体制が十分に整備されていない点こそが問題の本質である。
 そこで本発表では、歯科訪問診療の実践を踏まえ、これを“完結する場”ではなく“入口”として再定義し、それを支える後方支援機能を地域内に構築する必要性を論じる。後方支援機能とは、訪問診療では対応が難しい専門的評価、摂食嚥下機能の精査と介入、嚥下補助装置の製作・調整、難症例への助言、医科や病院との調整などを担う役割であり、地域の専門的ハブとして機能するものである。地域の歯科医療機関が日常的な口腔機能管理と継続支援を担い、後方支援歯科が専門的介入を担い、さらに医科・介護職と連携することで、地域全体で患者を支える体制が形成される。この分業構造を明確化することで、医療の質の向上と持続可能性の両立が可能となる。
 この体制は、従来の個別対応型から脱却した“地域完結型歯科医療”として位置づけられる。後方支援機能は単なる紹介先ではなく、専門的対応の拠点となることが求められる。訪問診療を行う歯科医療機関が孤立せず、難症例を地域で受け止める仕組みを持つことで、医療の質と継続性が担保される。2040年を見据えた地域歯科医療において、役割分担、紹介・逆紹介、情報共有を含む持続可能な体制構築は不可欠であり、後方支援機能の整備はその中核をなす概念である。今後は、後方支援機能の範囲を明確化するとともに、連携手順および運用体制の標準化と運用を進めることで、地域医療の発展に資する枠組みとなる。