講演情報
[SY3-3]人生の最終段階における『食』に関わる意思決定と歯科の役割を考える
○山口 浩平1 (1. 東京科学大学大学院 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【略歴】
2012年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2019年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野卒業
2021年 東京医科歯科大学病院 摂食嚥下リハビリテーション科 特任助教・医局長
2022年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 助教
2023年 同上 講師
2024年 東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 講師
2012年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2019年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野卒業
2021年 東京医科歯科大学病院 摂食嚥下リハビリテーション科 特任助教・医局長
2022年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 助教
2023年 同上 講師
2024年 東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 講師
超高齢社会や医療の進展を背景に、摂食嚥下障害を有する高齢者は増加し、栄養摂取方法も多様化・複雑化している。とりわけ人生の最終段階では、主要な栄養摂取経路を経口のまま継続するか、経管栄養へ移行するかなど、重大な意思決定が求められる。歯科はその意思決定に寄り添いうる立場にある一方、実臨床において深く関与する事例は必ずしも多くないのではないか。ガイドラインの整備は少しずつ進みつつあるが、現場には依然として多くの葛藤や課題が存在する。
嚥下機能と実際の経口摂取状況の間に乖離があることや十分な根拠に基づかず経口摂取が過度に制限されている状況も、いまだ少なくない。こうした課題の解決に、歯科は大きな役割を担いうるが、そのためには、全身管理や摂食嚥下リハビリテーションを含む体系的な知識と技能が求められる。食の選択肢を拡げるという点から、補綴歯科治療などによる口腔環境の整備も重要である。また、すでに経管栄養が導入されている場合と、これから導入を検討する場合で、歯科医療者としての関わり方も全く異なり、その患者にとっての「食べる」ことの意義から考える必要に迫られる場面もある。人生の最終段階における「食べる」は、個別性が極めて高い。そのため、たとえ質の高い無作為化比較試験に基づくガイドラインが整備されても、最終的な判断は現場に委ねられる部分が大きいだろう。
経口摂取に関するエビデンスには、経管栄養から経口摂取を再確立することで口腔・腸内細菌叢の改善がみられることや、被介護者のみならず家族を含む介護者にもポジティブな心理的影響を及ぼすことなど、少量であっても経口摂取の意義を示す報告がある。量的研究に加え質的研究の重要性は、「高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025」において「物語」という言葉が繰り返し用いられていることからも明らかである。人生をその人固有の物語として捉えれば、数値のみの評価には限界がある。
歯科医療が人生の最終段階における「食べる」という意思決定に深く関わる構造は、歯科訪問診療と摂食嚥下リハビリテーションが発達した日本ならではの特徴といえる。嚥下内視鏡検査を含め、歯科医師が「食べる」チーム医療の中核を担う日本のケアモデルは、今後高齢化を迎える世界からも注目されている。人生の最終段階に関わる歯科医療者には、「食べる・食べない」という二元論ではなく、「何を、どの程度、誰とどこで食べるか」といった多様な選択肢を、状況に応じて組み合わせる柔軟な姿勢が求められる。
本演題では、歯科訪問診療における摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医師の立場から、症例を交えつつ、人生の最終段階における「食べる」ことの意味と、その意思決定および支援のあり方について考察する。本シンポジウムにおける議論の一助となれば幸いである。
嚥下機能と実際の経口摂取状況の間に乖離があることや十分な根拠に基づかず経口摂取が過度に制限されている状況も、いまだ少なくない。こうした課題の解決に、歯科は大きな役割を担いうるが、そのためには、全身管理や摂食嚥下リハビリテーションを含む体系的な知識と技能が求められる。食の選択肢を拡げるという点から、補綴歯科治療などによる口腔環境の整備も重要である。また、すでに経管栄養が導入されている場合と、これから導入を検討する場合で、歯科医療者としての関わり方も全く異なり、その患者にとっての「食べる」ことの意義から考える必要に迫られる場面もある。人生の最終段階における「食べる」は、個別性が極めて高い。そのため、たとえ質の高い無作為化比較試験に基づくガイドラインが整備されても、最終的な判断は現場に委ねられる部分が大きいだろう。
経口摂取に関するエビデンスには、経管栄養から経口摂取を再確立することで口腔・腸内細菌叢の改善がみられることや、被介護者のみならず家族を含む介護者にもポジティブな心理的影響を及ぼすことなど、少量であっても経口摂取の意義を示す報告がある。量的研究に加え質的研究の重要性は、「高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025」において「物語」という言葉が繰り返し用いられていることからも明らかである。人生をその人固有の物語として捉えれば、数値のみの評価には限界がある。
歯科医療が人生の最終段階における「食べる」という意思決定に深く関わる構造は、歯科訪問診療と摂食嚥下リハビリテーションが発達した日本ならではの特徴といえる。嚥下内視鏡検査を含め、歯科医師が「食べる」チーム医療の中核を担う日本のケアモデルは、今後高齢化を迎える世界からも注目されている。人生の最終段階に関わる歯科医療者には、「食べる・食べない」という二元論ではなく、「何を、どの程度、誰とどこで食べるか」といった多様な選択肢を、状況に応じて組み合わせる柔軟な姿勢が求められる。
本演題では、歯科訪問診療における摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医師の立場から、症例を交えつつ、人生の最終段階における「食べる」ことの意味と、その意思決定および支援のあり方について考察する。本シンポジウムにおける議論の一助となれば幸いである。
