講演情報

[SY7-2]行政とアカデミアが連携して拓く地域包括ケア -多職種による健康長寿への取組- 行政からの報告

○菊池 健1 (1. 大阪府豊能郡能勢町福祉部福祉課)
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【略歴】
2000年7月 能勢町役場入庁
2021年4月 福祉部健康づくり課長
2026年4月 福祉部福祉課長
社会福祉士、介護支援専門員
 大阪府の最北端に位置する能勢町では、農村社会の中で豊かなソーシャルキャピタルが醸成されてきた。一方、令和8年3月末の人口は8,658人、高齢化率は45.7%であり、健康寿命延伸の取組を進めなければ持続可能な地域社会の維持が困難になることが予想される。このため、能勢町では令和2年度から大阪大学、オムロンヘルスケア株式会社と産学官連携研究である「能勢健康長寿研究(のせけん)」に取り組んだ。「のせけん」は、家庭血圧測定が町民の健康寿命延伸に寄与するか検証する研究であり、40歳以上町民の15.4%に当たる1,153人が参加し、現在もその8割以上の町民が測定を継続している。令和4年度からは「のせけん」に大阪大学大学院歯学研究科が参画し、大学の歯科医師が地域40か所を超える公民館に直接出向いて口腔機能検査を行うとともに、歯科衛生士による個別フィードバックを行っている。
 この歯科の取組に当たり、能勢町は、研究に協力した町民への検査結果の個別フィードバックに併せ、地域全体のオーラルフレイル対策を講じる必要があると考えた。そのためには、町民生活の視点を踏まえた歯科口腔保健のポピュレーションアプローチが行える専門人材の確保が必要となり、令和6年度から歯科衛生士を任用した。任用に係る庁内協議では、近隣市町の行政歯科衛生士の配置状況、必要経費の財源確保、町民(特に後期高齢者)の口腔状況や誤嚥性肺炎の患者数等を示すとともに、行政歯科衛生士の役割や意義について、理事者をはじめ関係部局と協議を行った。
 歯科を含めた大学との連携は、本町で働く歯科衛生士や保健師が、日本の公衆衛生分野の最新知見に日常的に触れることにつながり、専門職としてのモチベーション維持向上に好ましい影響を及ぼしている。また、大阪大学から得られる研究結果は、本町の保健福祉施策の方向性を示す羅針盤となるとともに、行政課題に取り組むきっかけにもなっている。さらに、町民に身近な公民館で取組を展開していることは、予防を一部の意識の高い人だけのものにしない、ヘルスリテラシーの裾野拡大に寄与している。こうしたことは、行政単独では成し得ない、アカデミアと連携する大きな意義と考える。
 能勢町では、核家族化や高齢者の高齢化により単身高齢者世帯が増加傾向にある。これまでは家族が担ってきた(些細な内容を含めた)高齢者の生活相談が多く寄せられ、その対応に苦慮している。こうした地域課題を解決しつつ、今後も持続可能な地域社会を維持するためには、個々の健康づくりのみならず、地域づくりが欠かせないと考えている。地域づくりには、当事者や関係者が課題を意欲的に解決しようと学ぶ姿勢や土壌が必要であり、「のせけん」歯科の取組は、こうした機運の醸成にも寄与している。本シンポジウムでは、こうした点を含め、アカデミアとの連携について、行政の立場から報告したい。