講演情報

[SY7-3]行政とアカデミアが連携して拓く地域包括ケア―多職種による健康長寿への取り組み
ー変化を育てる歯科衛生士

○福岡 智子1,2 (1. 大阪府豊能郡能勢町福祉部すこやか支援課、2. 大阪府歯科衛生士会)
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【略歴】
1987年 兵庫県立総合衛生学院歯科衛生学科を卒業後、野村證券大阪健康管理センター歯科に入職
その後、一般歯科診療所、在宅や施設への訪問歯科、歯科衛生士養成校での非常勤講師など、臨床・在宅・教育の各領域で幅広く口腔保健に携わってきた。地域ケア会議や介護予防教室の講師として地域歯科保健にも関わり、地域での口腔機能支援に取り組んできた。
のせけん歯学班での住民の口腔機能支援の経験を経て、現在は大阪府豊能郡能勢町福祉部すこやか支援課に所属し、地域保健の立場から多職種連携による口腔保健活動を推進している。
大阪府豊能郡能勢町では、令和2年度より大阪大学大学院医学系研究科、オムロンヘルスケア社、能勢町の三者による産官学連携事業「能勢町健康長寿事業(のせけん)」を開始した。令和4年度からは大阪大学大学院歯学研究科が参画した。のせけん歯学班の特徴は、従来の取り組みではあまりみられない、歯科医師による口腔機能検査と歯科衛生士による個別フィードバックを組み合わせた体制を整えた点にある。検査結果を生活に結びつけて伝えることで、住民の理解を促し、行動変容を支える仕組みを構築した。オーラルフレイル対策において、リーフレットを配布し自宅で口腔体操の実施を促していたが、「渡すだけでは実施につながらないのではないか」という課題を歯科衛生士間で共有していた。こうした課題を背景に、歯科衛生士が通いの場に出向き積極的に介入したいと歯学班に申し入れた。その結果、通いの場で口腔体操の解説・実技指導を行う積極的介入(ポピュレーションアプローチ)が実現した。この取り組みにより、オーラルフレイルへの理解を深め、通いの場での口腔体操の実践を広げるとともに、住民の行動変容を後押しする基盤の構築を目指した。令和6年度には能勢町に歯科衛生士が任用され、通いの場への継続的な支援が可能となった。通いの場では、口腔機能が日常生活に及ぼす影響を伝え、飲み込む時の喉の動きを自分の手で確かめるなど、自分ごととして気づくきっかけとなる工夫を取り入れた。加えて、DVDを用いた「かみかみ百歳体操」の実践支援やアンケート調査を継続して行った。 支援を進める中で、自宅での口腔体操の実施には意向があっても行動に至らない住民が一定数みられた。一方で、自宅で口腔体操を始めた住民の多くは、検査結果そのものよりも、口の機能を保ちたいという思いや、リーフレットを受け取ったことを動機として挙げていた。これらのことから、検査結果を生活に結びつけて丁寧に伝える歯科衛生士の関わりが、住民の行動を後押ししていたことがうかがわれた。 一方で、通いの場での歯科検査には課題もあった。生活の場で口を開ける・義歯を外すことには抵抗がみられ、検査時の会話が周囲に聞こえることで自分の口の状態が知り合いに知られてしまうのではと不安を抱く住民もおり、「歯科検査は受けたくない」といった声も寄せられた。こうした課題に対し、歯科衛生士は多職種と事前に調整を重ね、各通いの場に寄り添った環境づくりを進めた。こうした取り組みを通して、住民が安心して歯科衛生士の関わりを受け入れられる関係づくりが進み、行動変容を支える土台となっていった。地域で生まれつつある変化の芽を育てる歯科衛生士の実践は、専門職に加え、能勢町職員や住民と共に進めてきた関わりに支えられている。これらの経験を背景に、本シンポジウムでは地域における歯科衛生士の役割とその意義をお伝えできれば幸いである。