講演情報

[優秀P衛生-1]ワレンベルグ症候群患者に対し在宅で歯科衛生士が摂食嚥下訓練を実施し経口摂取再開に至った一例

○相羽 珠緒1、山城 満喜子1、首藤 嵩典1、宮田 由紀子1、是本 夕華1、松尾 浩一郎2、樋口 和徳1 (1. みんなの歯医者さん、2. 東京科学大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言・目的】
 ワレンベルグ症候群は延髄外側病変により発症し,嚥下障害を高率に合併する。咽頭壁や軟口蓋・声帯,食道入口部の運動に左右差(病巣側の運動低下)が生じることがあり,頸部回旋などの姿勢調整は嚥下動態の左右差改善に有効とされている。しかし在宅療養下では,嚥下機能評価結果を日常支援に反映し,訓練を継続することが困難である。本報告では,歯科訪問診療において歯科衛生士が嚥下内視鏡検査(VE)所見に基づき摂食嚥下訓練を継続的に実施し,経口摂取再開に至った在宅療養中のワレンベルグ症候群患者の一例を報告する。
【症例および経過】
 81歳女性。延髄左側脳梗塞後に重度嚥下障害を呈し胃瘻造設。退院後はペースト食を経口摂取していたが誤嚥性肺炎を発症し再入院,その後は絶飲食となった。本人の経口摂取への強い希望を受け歯科訪問診療開始となった。 初回介入時,歯科医師により左下顎犬歯の動揺歯の抜歯を行い義歯新製を開始,VEを実施した。初回のVEでは左側食道入口部の開大不全,左梨状窩および喉頭蓋谷への著明な咽頭残留を認め,藤島式摂食嚥下能力グレード(嚥下Gr)は2であった。頸部左回旋および顎引き姿勢により咽頭残留量を減らすことが可能であったため,同姿勢下にて3%とろみ水分および嚥下調整食2-1より経口摂取を開始した。以降,月2回の頻度で歯科衛生士による口腔衛生管理,舌運動訓練,頸部回旋運動等の間接訓練と姿勢調整下での直接訓練を実施した。3か月後の2回目のVEでは嚥下Grは4に,6か月後の3回目のVEでは6まで改善を認め,咽頭残留量の減少を認めた。さらに1%とろみ水分および嚥下調整食3を安全に摂取可能となり,経管栄養は1日1回まで減量となった。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,歯科衛生士がVE所見に基づき在宅環境に即した訓練と姿勢調整を継続したことが,摂食嚥下機能改善および経口摂取再開に寄与したと考えられる。 在宅高齢者の摂食嚥下管理において,歯科衛生士による継続的な介入は,経口摂取維持および誤嚥性肺炎予防の観点から有用であると考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)