講演情報
[優秀P地域-2]5Msフレームワークにより歯科訪問診療につなげた若年性アルツハイマー型認知症患者の一例
○市川 陽介1、中村 純也1、釘宮 嘉浩1、横山 惟子1、中野 有生1、守谷 恵未1、村上 正治1 (1. 国立長寿医療研究センター)
【緒言・目的】
高齢者歯科医療では,多様な社会的背景や生活環境,併存疾患を持つ患者を対象としており,疾患単位の評価にとどまらず,機能,生活,価値観を含めた包括的評価が求められる。2025年に日本老年医学会より医療から地域への連携を促進するフレームワークとして5Ms(Mind,Mobility,Medications,Multicomplexity,Matters Most)のポジションステートメントが発表された。今回,5Msを用いて歯科訪問診療につなげた若年性アルツハイマー型認知症患者の症例を経験したため,5Msの有用性を含めてその経過を報告する。
【症例および経過】
73歳男性,要介護5,自宅療養中。2008年に若年性アルツハイマー型認知症と診断された。2022年より認知症に伴うブラキシズムによる咬傷および歯冠破折を繰り返したため,マウスピース治療を行うとともに,ADL低下を考慮した口腔環境の維持を図った。2023年11月,飲水時のむせがあることから嚥下造影検査を実施したところ,嚥下反射惹起遅延,液体の喉頭侵入を認め,水分への1%とろみの付与が推奨された。2025年1月,肺炎のため他院入院となり,経口摂取困難と判断され胃瘻造設術が施行された。退院後,当院受診時に5Msによる評価を行ったところ,Mobilityでは臨床虚弱尺度が7から8へ悪化し,Multicomplexityでは妻の介護負担増大が明らかとなった。Matters Mostとして患者自身が最も重視していたことは「食べる」であったことを意思疎通困難な患者に代わり,家族より聴取した。これらを踏まえ,病院歯科による歯科訪問診療へ移行し,5Ms評価および嚥下内視鏡検査結果を多職種で共有した上で,患者および家族の価値観に配慮し,歯科訪問診療時に限り楽しみ程度の経口摂取を継続している。
【考察】
本症例では,5Msを用いた包括的評価により,患者の身体機能,生活背景,家族の介護状況を可視化し,歯科訪問診療への円滑な移行が可能となった。特にMatters Mostの聴取は,患者の価値観を尊重した方針決定に重要な役割を果たした。5Msは,歯科訪問診療への移行,意思決定支援など,患者の包括的評価を必要とする高齢者歯科医療を実践する上で有用なフレームワークである可能性がある。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
高齢者歯科医療では,多様な社会的背景や生活環境,併存疾患を持つ患者を対象としており,疾患単位の評価にとどまらず,機能,生活,価値観を含めた包括的評価が求められる。2025年に日本老年医学会より医療から地域への連携を促進するフレームワークとして5Ms(Mind,Mobility,Medications,Multicomplexity,Matters Most)のポジションステートメントが発表された。今回,5Msを用いて歯科訪問診療につなげた若年性アルツハイマー型認知症患者の症例を経験したため,5Msの有用性を含めてその経過を報告する。
【症例および経過】
73歳男性,要介護5,自宅療養中。2008年に若年性アルツハイマー型認知症と診断された。2022年より認知症に伴うブラキシズムによる咬傷および歯冠破折を繰り返したため,マウスピース治療を行うとともに,ADL低下を考慮した口腔環境の維持を図った。2023年11月,飲水時のむせがあることから嚥下造影検査を実施したところ,嚥下反射惹起遅延,液体の喉頭侵入を認め,水分への1%とろみの付与が推奨された。2025年1月,肺炎のため他院入院となり,経口摂取困難と判断され胃瘻造設術が施行された。退院後,当院受診時に5Msによる評価を行ったところ,Mobilityでは臨床虚弱尺度が7から8へ悪化し,Multicomplexityでは妻の介護負担増大が明らかとなった。Matters Mostとして患者自身が最も重視していたことは「食べる」であったことを意思疎通困難な患者に代わり,家族より聴取した。これらを踏まえ,病院歯科による歯科訪問診療へ移行し,5Ms評価および嚥下内視鏡検査結果を多職種で共有した上で,患者および家族の価値観に配慮し,歯科訪問診療時に限り楽しみ程度の経口摂取を継続している。
【考察】
本症例では,5Msを用いた包括的評価により,患者の身体機能,生活背景,家族の介護状況を可視化し,歯科訪問診療への円滑な移行が可能となった。特にMatters Mostの聴取は,患者の価値観を尊重した方針決定に重要な役割を果たした。5Msは,歯科訪問診療への移行,意思決定支援など,患者の包括的評価を必要とする高齢者歯科医療を実践する上で有用なフレームワークである可能性がある。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
