講演情報

[優秀P一般-3]消化器系腫瘍患者における残存歯数ならびに栄養指標と生命予後との関係

○矢沢 麻生1、岡本 美英子2、長谷 菜々子1、坂井 鮎1、田中 紘子1、伊西口 初音1、横井 美有希2、吉田 光由2 (1. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科、2. 藤田医科大学 医学部 歯科・口腔外科学講座)
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【目的】
 周術期の栄養管理は術後合併症の予防や早期回復に重要である。消化器系腫瘍の手術においては,予後推定栄養指数(Prognostic Nutritional Index : PNI)やCRP/アルブミン比(CAR)が栄養状態の評価だけでなく,術後合併症や生存期間といった予後とも関係していると報告されている。本研究では,消化器系腫瘍患者の残存歯数とPNIやCARとの関係を明らかにし,長期予後との関係についても検討することとした。
【方法】
 2022年1月から12月の間に消化器系腫瘍手術前に周術期口腔機能管理を受けた65歳以上の患者178名(上部消化管領域53名,下部消化管領域84名,肝胆膵領域41名)を対象とし,領域ごとに残存歯数とPNI,CARの相関係数を算出し,さらに,2025年12月時点での生存群と死亡群のPNI,CARならびに残存歯数をMann-Whitney検定により比較した。
【結果と考察】
 上部消化管領域の患者では,残存歯数とPNIに正の相関があり,残存歯数が少ないほどPNIが低く(r=0.343,p=0.012),残存歯数とCARには負の相関があり,残存歯数が少ないほどCARが高い結果となっていた(r=-0.297,p=0.036)。下部消化管領域と肝胆膵領域の患者ではこのような関係は認められなかった。さらに3年後の予後との関係をみると,PNIは下部消化管領域でのみ生存群と死亡群の間で有意差を認めた。一方,残存歯数は上部消化管領域において生存群で18.0±8.7本,死亡群で12.5±8.8本と生存群で有意に多かった(p=0.045)。以上から,上部消化管領域の患者では残存歯数が少ないほど術後予後不良となりやすいことが示された。残存歯数が少ないために咀嚼能力が低下し,食塊形成が不十分なまま食物が胃や小腸へと運ばれてしまうことで栄養の消化吸収効率が低下し,術後予後の悪化につながった可能性が考えられた。一方,下部消化管領域や肝胆膵領域の患者は,胃の機能が保たれているため,咀嚼が不十分でも消化吸収が補われ,栄養状態や術後予後に差は出なかったものと考えられた。以上より,残存歯数の減少は上部消化管腫瘍患者の予後に影響する可能性があり,術前からの栄養管理がより重要となることが示唆された。
(COI 開示:なし)
(藤田医科大学病院 倫理審査委員会承認番号 HM24-526)