講演情報
[O1-1]老衰患者を看取り目的で自宅・施設退院させることの困難感
― 病院勤務の老年科専門医を対象とした全国的な横断研究 ―
今永 光彦 (奏診療所)
【目的】病院勤務の老年科専門医が老衰患者を看取り目的で退院させることに困難を感じているか、その理由、及び医療処置の頻度との関連を明らかにする。【方法】病院勤務の日本老年医学会専門医1196名(2025年1月)を対象に郵送式質問紙調査による横断研究を行った。質問項目は、性別、医師経験年数、在宅医療経験の有無、老衰患者が経口摂取困難となった際の医療処置(輸液、中心静脈栄養、経鼻胃管、胃瘻)の実施頻度(各4件法、合算スコア)、老衰患者を看取り目的で自宅または施設に退院させることの困難感(4件法)、困難な理由(複数選択可)とした。回答データの記述統計を行い、困難感と医療処置頻度との関連を検討するため、性別、医師経験年数、在宅医療経験の有無を調整した順序ロジスティック回帰分析を行った。日本在宅医療連合学会の倫理審査で承認を得た。【結果】回答率は35.4%であり、老衰と診断した経験のある301名を解析対象とした。自宅退院について「常に/しばしば困難」と回答した医師は86.1%で、主な理由は「介護力の不足」(87.5%)、「家族の病院志向が強い」(66.3%)であった。施設退院について「常に/しばしば困難」と回答した医師は72.4%で、「施設が看取りに対応していない」(67.0%)、「必要な医療処置に対応できない」(60.0%)が主な理由であった。順序ロジスティック回帰分析では、経口摂取困難時に医療処置を行う頻度が高い医師ほど、自宅(OR=1.13, 95%CI:1.01–1.26)および施設(OR=1.14, 95%CI:1.01–1.27)への退院を困難と感じる傾向が有意に認められた。【考察】多くの老年科専門医が老衰患者を看取り目的で自宅や施設に退院させることに困難を感じていた。医療処置頻度の高い医師ほど困難感が強く、老衰患者における医療処置の必要性や支援体制の再検討が示唆された。
