講演情報

[O10-2]栄養管理と腹水ドレナージにてQOL改善した独居膵癌の一例

杉本 由佳 (すぎもと在宅医療クリニック)
【はじめに】在宅医療では独居患者が増加し、家族がいても介護が困難な状況が多い。がん治療は外来が中心となり、腹水貯留を伴う症例では通院自体が負担となる。今回、膵癌腹膜播種による難治性腹水に対し、通院でのCARTや腹水穿刺が限界となった後、自宅で腹水持続ドレナージを行いながら栄養状態とQOLを維持できた独居症例を報告する。【症例】70歳代男性、膵尾部癌Stage IV、腹膜播種、膵性糖尿病。喫煙80本/日、ウイスキー1本/日、独居。202x年10月胃痛で受診し、11月に膵尾部癌・腹膜播種と診断。腹水ドレナージ後にGEM+nab-PTX療法を開始したが腹水は増悪し、CART施行中も頻回の腹水穿刺を要した。2月初回訪問時、血圧90/触、脈拍110回、Alb 2.1 g/dL、全身浮腫、腹部膨満、強い呼吸苦、意識混濁を認めたため、アルブミン投与と補液を行いながら腹水持続ドレナージを開始し、デキサメタゾン持続皮下注を併用した。翌日には歩行・経口摂取が可能となったが、貧血進行のため照射濃厚赤血球2単位輸血を施行。経口摂取に加え経腸栄養剤を導入し、入浴や外出も可能となった。3月に腸閉塞症状が出現し、自宅でPICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)を挿入しHPN(在宅中心静脈栄養)を開始。ADLは再び改善し、3月末には外出も可能であった。4月に吐血し減圧胃管を挿入、5日後に自宅で永眠した。【考察】本症例は独居であったが病識と危機管理能力が高く、腹水持続ドレナージ、携帯型注入ポンプ、HPNなど複数のデバイスを装着した状態でも安全に在宅生活が可能であった。適切な栄養管理の重要性を共有することで、本人の希望であった「最期まで自力でトイレに行く」ことが実現できた。在宅医療において、独居であっても支援体制と患者の理解があればQOLを維持した生活が可能である。