講演情報

[O14-1]在宅診療中の鼻咽頭ぬぐい液採取で誘発された神経心臓反射により失神・呼吸停止を来した独居患者の一例 ~鼻咽頭関連処置に潜在する迷走神経反射リスクの再考~

松田 浩明, 山邊 陽子, 西川 和希, 水野 大輔, 西田 裕子, 中川 ふみ, 逢坂 隆之, 中村 幸伸 (つばさクリニック岡山)
【はじめに】新型コロナウイルス感染症流行以降、鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査は在宅医療でも日常的に行われている。鼻咽頭刺激は三叉神経心臓反射(Trigeminocardiac reflex:TCR)を介し失神・徐脈・呼吸停止・心停止を来す可能性があることは知られているが、在宅医療の現場で鼻咽頭ぬぐい液採取を契機とするTCRにより呼吸停止に至った本邦報告は確認できず、起こった場合、救命処置・原因検索が遅れるリスクがある。今回、訪問診療中の抗原検査でTCRが誘発され、心肺蘇生(CPR)を要した症例を経験した。【症例】91歳、女性。独居。既往に慢性心不全、完全房室ブロックに対するペースメーカー植込み、心房細動、糖尿病。デイサービスで38℃台の発熱を認め自宅に往診、座位で鼻咽頭ぬぐい液採取による新型コロナコロナウイルス、インフルエンザウイルスの抗原検査を施行、綿棒を鼻腔から咽頭へ挿入したところ、採取中に眼球上転、無反応、無呼吸となり、橈骨動脈は触知不能となった。直ちに臥床させCPR(胸骨圧迫とバッグ換気)を行い、救急要請した。数分で意識・自発呼吸は回復し、搬送後に腎盂腎炎が発熱源と診断された。循環呼吸停止の機序は、咽頭刺激を契機とするTCRが最も疑われた。【考察】鼻咽頭スワブ検査に伴うTCRは極めて稀だが、失神、不整脈誘発、心静止の報告は存在する。鼻咽頭刺激を伴う耳鼻科領域での経鼻処置の失神発作0.16%、経鼻内視鏡中の無症候性徐脈30%超との報告があり、TCRのリスク因子として心疾患、徐脈傾向、不整脈、刺激強度・刺激時間等が挙げられる。本症例では基礎心疾患が反射誘発に寄与した可能性が高い。在宅医療では即時の救命処置、原因検索が困難であるため、鼻咽頭ぬぐい液採取の際にはTCRという潜在的ながら致死的となり得る合併症を念頭に置くことが重要である。