講演情報

[O14-4]旬野菜を用いた小児向け嚥下スープの開発と普及|家族でおいしい「共食」の体験に着目した活動報告

香西 杏子1,2, 櫛引 久丸5, 久保 香苗4, 飯田 祥男7, 多田 梨保5, 権城 泉5, 栗田 靖子5, 松本 由輝6, ヘンシャ 理紗子1,3 (1.一般社団法人Heartkids’LIFELINK, 2.公益社団法人子どもの発達科学研究所, 3.歯科・健康保健室, 4.医療法人稲生会, 5.社会福祉法人恩賜財団済生会支部北海道, 6.就労継続支援所ぷりもぱっそ, 7.コロポックル薬局)
【はじめに】
嚥下機能に配慮が必要なこどもにとっても、「食べること」は家族や社会とつながる重要な体験である。しかし現状、食、中でも「同じ料理を食べる喜び」は制限されやすい。高齢者の嚥下食市場は充実しつつあるが、小児向けは選択肢が乏しく、「家族もおいしく本人もおいしい」体験を実現する製品はほとんど存在しない。本報告では、旬の野菜を用いた嚥下スープの開発と普及を通じ、大事な人とおいしい料理を一緒に食べるという当たり前の幸福体験の小児在宅における現状と今後の可能性を検討する。

【活動】
今回の活動主体となった、札幌市を拠点にする非営利団体では通常、医療依存度が高い小児領域における医療者育成や当事者支援を行っている。
活動の中で入院中の子どもの付添食として母親にスープを提供した際、「この子も同じもの食べられますか」という一言がきっかけで本活動を始めた。2025年、助成を受けて地元の野菜で嚥下や胃ろうに配慮したスープを企画し、複数の医療機関と多職種の協力の下でレシピ・製品を開発設計した。製造は地域の就労支援事業所に委託、札幌市内および首都圏の医療センターなどで同年4回試食会を実施し、18名への定性調査及び延べ約300人を対象に満足度を評価軸とする定量調査を行った。

【考察】
小児にも在宅医療が広がる今、QOLに直結する食支援は重要なテーマである。「同じものを食べる」体験は、家族ごとに別調理を行う従来の負担軽減にもつながる可能性が示唆された。本活動は医・農・福連携モデルの一例となり得る。何より本取組みで重視したのは、食材のこだわりや遊び食べするきょうだいへ配慮した「混ぜてもおいしい」レシピなど「おいしい」の共有体験である。こうした観点で、今後は調査結果をもとに生活の質への影響やニーズを評価し、小児における食支援の標準化に向けたエビデンスの蓄積を進めたい。