講演情報

[O3-1]大規模団地における在宅医療拠点を核とした「医療×生活×関係性」を統合する地域づくりの実践:在宅入院的介入と社会関係の再構築を両輪として

八森 淳, 大友 路子 (医療法人MoLead つながるクリニック)
【はじめに】 大規模団地では高齢化に伴い生活課題が複雑化している。当院が立地する野庭団地は人口10,053人、高齢化率53.3%に達し、診療圏1km内には約6.2万人が居住する超高齢高密度地域である。本地域は自治会活動が活発だが、加齢に伴うADL・認知機能低下により、既存の繋がりが分断され生活基盤が脆弱化する事例が増加している。住民の不安は「急変時」に集中するが、多くは真の急性疾患ではなく、社会関係の維持困難という背景に亜急性要因が重なり顕在化したものである。救急搬送のみでは背景要因まで解決できず、根本的な解決に至らないことも少なくない。
【活動】 当院は団地内の在宅医療拠点として「在宅入院」的介入も行い、入院回避と生活の立て直しを図っている。継続的診療に加え、緊急往診を起点としたソーシャルワークを含む包括的介入を実践している。高齢者の急変は身体機能低下に伴う社会的脆弱性(Social Vulnerability)に規定される側面が強いため、医学的治療を「垂直的介入」、社会関係(Social Capital)を再構築する取り組みを「水平的介入」と位置づけ両輪で実践している。その結節点としてチャプレンを配置し、個人の「意味」に寄り添い内面を支え、再び社会と繋がるための心理的基盤を整えている。具体的には、当院交流拠点での文化活動、多職種カンファレンス、団地集会所でのコンサート、医療・福祉・まちづくりに関する地域シンポジウムを継続開催している。
【考察】これらの取り組みは、個人の内面から地域参加までをシームレスに促し、社会関係資本の再編に寄与している。在宅医療拠点が入院代替機能と関係性支援を統合して担うことで、医療は点的介入から生活基盤を支える社会的インフラへ拡張する。当院はこの機能を「地域包括メディカルセンター」と定義しており、本実践は持続可能な在宅医療モデルとなり得る。