講演情報

[O6-4]在宅呼吸器終末期患者の終末期せん妄に対するブロナンセリン貼付剤の有効性と安全性―血漿中ブロナンセリン濃度に基づく検討―

安藤 克利1, 鈴木 歩1, 吉田 寛輝2 (1.目黒ケイホームクリニック, 2.株式会社データシード)
【目的】せん妄は、がんや難病の終末期に高頻度に発症し、中でも、在宅では家族介護者の負担が問題となる。せん妄の治療や予防に対しては、抗精神病薬が使用されるが、経口・注射製剤が中心であり、在宅での治療選択肢は限られてきた。ブロナンセリン貼付剤は、統合失調症に対する貼付剤として本邦で初めて承認された。我々は先行研究にて、本剤が在宅終末期せん妄の発症率を70.4%から16.3%へ低下させ、呼吸困難の緩和に有効であることを報告してきた(Respir Invest 2023;240–246)。一方、本剤の有害事象として、統合失調症患者では、錐体外路症状が10%を超えるとされるが、我々の経験では、これらはまれである。本研究では、在宅における本剤の安全性や有効性を検証するため、血漿ブロナンセリン濃度を測定し、薬物動態の評価をふまえて検討した。【方法】当院にて在宅医療を受け、本剤を使用した終末期呼吸器疾患患者150例を対象に、診療録から臨床指標を集積した。保存血漿を有する32例では、質量分析法により血漿中ブロナンセリン濃度を測定し、統合失調症患者を対象とした臨床試験から再構築して得られた結果と比較した。(順天堂大学倫理委員会承認済:E23-0337)【結果】終末期せん妄の発症頻度は28例(18.7%)で、先行研究と同様であった。有害事象は、錐体外路症状が5.3%、皮膚関連反応が2.0%であり、統合失調症に対する臨床試験結果より低率であった。血漿中のブロナンセリン濃度は、0.29±0.29ng/mLと統合失調症における血漿中濃度よりも低値であった(0.70±0.31 ng/mL,p=0.022)。【考察】血中濃度が低いにもかかわらず臨床的有効性が維持され、有害事象の発現抑制に寄与している可能性が示唆された。本剤は、在宅終末期医療における安全かつ有効な治療選択肢となり得る可能性がある。