講演情報

[OS01-1]話題提供:在宅医療の鍼灸利用における課題

高梨 知揚 (東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科)
2001年 東北大学文学部人文社会学科 卒業
2004年 国際鍼灸専門学校 卒業(はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師免許取得)
2009年 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 助手
2017年 博士(人間科学)(早稲田大学)
2025年 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 准教授(現職)
「何にどう効くのか」、「どういう時に取り入れれば良いのか」、そして「誰にお願いすればよいのか」。これらは、他医療・ケア職の、鍼灸師に対する鍼灸利用をめぐる3大質問と言える。
 最初の2つの問いについては、近年の世界各国の飛躍的な質の高い研究の蓄積の成果もあり、それなりの回答パターンが存在する。ただし、実際に現場で鍼灸を実装する上で最も重要な「誰にお願いすれば良いのか」という問いについては、未だ明確な回答パターンがない。在宅療養支援診療所医師らを対象とした在宅緩和ケアにおける鍼灸師との連携に関する調査(高梨ら 2014, 2016)では、連携施設は14%にとどまったものの、66.3%の医師らが条件次第では連携を検討すると回答している。ただし同調査においては、在宅ケアの現場における「顔の見えない相手との連携の難しさ」が問題点の一つとして挙げられており、総じて他職種が鍼灸師と接する機会の少なさ、あるいは連携機会の少なさが、在宅医療の鍼灸利用における一つの大きな課題であることが明らかとなった。
 一方で、医師の同意のもと、特定の疾病に限り公的医療保険給付の対象となる「療養費」の経年推移からは、在宅療養場面における鍼灸利用が年々増加傾向にあることが示唆される。ただし、この療養費についても、先に提示した「顔の見えない相手との連携の難しさ」の問題も絡み、その利用を巡って鍼灸師に対する他職種の複雑な思いを耳にすることも少なくない。今後、療養費の利用も含め、鍼灸師が他職種と適切な連携体制を構築していくことは、チームケアが重要視される在宅医療の現場における一つの重要なテーマと言える。
 本シンポジウム冒頭では、今後の在宅医療における鍼灸(鍼灸師)の医療資源としての適切な利用について検討するべく、鍼灸師と他職種の連携をめぐる課題について話題提供する。