講演情報

[OS02-2]地域で暮らし続けるための足病ケア
−医療の谷間にある「足」を診るということ−

多田 明良 (紀美野町国民健康保険国吉・長谷毛原診療所)
平成22年 自治医科大学医学部卒業
平成22年 長野県立須坂病院(現:長野県立信州医療センター)初期臨床研修。その後長野県で小児科医として従事
平成28年 国保北山村診療所 所長 (和歌山県へ)
平成31年 奈良県立医科大学医学部附属病院 総合画像診断センター(常勤)紀美野町立国保国吉・長谷毛原診療所(非常勤)
令和2年 紀美野町立国保国吉・長谷毛原診療所 所長
在宅医療やへき地医療の現場では、転倒や歩行機能低下を契機として生活機能が大きく損なわれる患者を数多く経験する。一方で、日常診療において足部の状態に十分な注意を向けてこなかったことも事実である。実際には、巻き爪や胼胝、変形、浮腫などの足のトラブルは頻繁にみられ、診療の中でその都度対応はしてきたものの、再発を繰り返す例も少なくなかった。

足部の問題は、皮膚・運動器・循環といった複数の領域にまたがる一方で、明確な相談先が見えにくく、いわば医療の谷間に置かれやすい分野である。その結果、プライマリ・ケアの現場で抱え込まれ、十分な介入に至らない状況が生じていたと考えられた。

へき地では移動手段が限られ高齢者世帯も多いことから、歩行機能の維持は地域で生活を継続するための重要な前提条件である。外来で通院している患者であっても、将来的には在宅療養へ移行する可能性が高く、日常診療の段階から生活の場を想定した視点が求められる。

これまで介護予防といえば体操や運動指導に意識が向きがちであったが、身体の土台である足への視点が欠落していたことに気づかされた。足を診るという視点を得たことで、診療は症状への対処から、歩行様式や生活機能、再発予防を見据えた関わりへと変化した。

看護師や多職種と協働し、地域住民への啓発や相談の機会を重ねる中で、足に悩みを抱えながらもどこにも相談できていなかった住民の存在が可視化され、診療所への足に関する相談も増加した。足を診ることは、その人の生活を想像し、歩く意欲を支えることにつながる。医療の谷間に置かれがちな足診療こそ、在宅医療や地域医療に携わるプライマリ・ケア医が、多職種と連携しながら主体的に担うべき重要な役割であると考えられた。