講演情報

[OS10-1]在宅療養高齢者のポリファーマシーの状況

浜田 将太 (東京薬科大学)
2013年 京都大学大学院医学研究科 博士後期課程 研究指導認定退学、翌年 博士(社会健康医学)
2013年 京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分野 特定助教
2014年 英国キングス・カレッジ・ロンドン 生命科学・医学部 客員研究員
2016年 医療経済研究機構 研究員、2024年より担当部長
2025年 東京薬科大学 薬学部 薬剤疫学講座 教授
在宅療養高齢者は複数の疾患や症状を有することが多く、処方薬剤数が増加し、多剤服用となりやすい。多剤服用のうち、薬物有害事象のリスク増加や服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態はポリファーマシーと呼ばれている。薬物治療は在宅医療の重要な構成要素であり、在宅療養高齢者におけるポリファーマシーへの対応は臨床上の重要な課題である。
 近年、私たちはレセプトデータベースを用いて、在宅療養高齢者におけるポリファーマシーの実態や課題を明らかにしてきた。また、厚生労働省の関連事業に参画し、高齢者のポリファーマシー対策を推進するための指標の開発にも取り組んできた。本講演ではこれらの研究成果を概説する。
 具体的には、まず厚生労働省の指針に基づきポリファーマシーの概念を整理する。次に、2015年から2019年にかけた在宅療養高齢者におけるポリファーマシーの推移を示す。対象期間中、薬剤種類数にほぼ変化はみられなかったものの、高齢者に特に慎重な投与を要する薬物(PIMs)の多くで処方割合の低下が認められ、同種同効薬(例:睡眠薬)ではよりリスクの低い薬剤へのシフトがみられた。一方、認知症者に対する抗精神病薬の処方は依然として課題であり、プロトンポンプ阻害薬の処方増加などの新たな課題もみられた。さらに、在宅療養高齢者、外来患者、特別養護老人ホーム入所者といった療養環境別の比較を行った研究結果から、睡眠薬・抗不安薬、抗コリン作用を有する薬物、抗精神病薬などは療養環境によらず改善の余地がある薬剤であり、指標としての活用可能性が示唆された。在宅療養高齢者に特徴的な点として、利尿薬の処方割合が高い傾向が認められた。
 本講演の目的は、これらの結果を踏まえ、在宅療養高齢者における薬物治療の特徴とポリファーマシーの課題を整理し、聴講者が各自の臨床現場で薬物治療の適正化に取り組む際の一助となることである。