講演情報

[OS16-3]その「困った」は現場からのラブコール 〜訪問看護師による「ネガティブな要望」の再定義と連携強化への実践〜

桜庭 良輔 (訪問看護さくらステーション)
2014年 医療法人渓仁会手稲渓仁会病院入職
2019年 (株)エイチ・アイ・ユーサービス、訪問看護さくらステーション入職
2020年 訪問看護さくらステーション 管理者就任
2024年 (株)エイチ・アイ・ユーサービス 常務取締役就任
 「薬が管理できていない」「緊急時の連携が難しい」。在宅医療の現場では、訪問看護師から薬剤師に対して「困った」という名の摩擦が生じることがある。しかし、これらを単なる不満として片付けてはならない。本シンポジウムでは、現場から挙がる薬剤師への「ネガティブな要望」を、互いの専門性を発揮するための「エネルギー」と捉え直し、連携強化につなげた実践について訪問看護師の目線から報告する。
 当ステーションの看護師から挙がる要望を収集・分析した結果、①生活支援の壁(一包化管理等への関与)、②医療安全と質の壁(残薬調整や副作用の生活影響)、③システム・体制の壁(緊急時対応等)の3つに分類された。我々はこれらの厳しい要望を、単なる業務の押し付けではなく、「薬剤師の専門的介入によって患者の生活を守ってほしい」と願う、現場からの切実な『ラブコール(期待)』であると再定義した。
 実践報告では、特にカテゴリ②の「不安症で薬剤依存傾向があり、服薬管理が困難な事例」を取り上げる。「正しく飲ませたい」薬剤師と「生活を支えたい」看護師のギャップを埋めるため、以下の連携策を講じた。逆指名質問:看護師から「患者の特性を踏まえ、この薬はどこまで調整可能か」と専門性を引き出す問いを行う。観察ポイントの処方:開始時、生活上で見るべき副作用の初期兆候を薬剤師から具体的に伝達してもらう仕組みの構築。管理方法の再構築:薬局の属人的な手法に依存せず、緊急時に看護師がその場で対応可能な管理体制への移行。
 「困った」を『ラブコール』と捉え直し、具体的なアクションに落とし込むことで、薬剤師は「生活」を、看護師は「根拠」を持つことができる。相互の専門性を補完し合う関係構築こそが、質の高い在宅医療に寄与すると考える。