講演情報

[P1-1]Narrative Based Medicineの実践

矢ヶ﨑 秀彦, 髙橋 日香理, 谷田部 峰男, 坂口 敏夫 (医療法人あい ハンディクリニック)
【はじめに】Narrative based medicine(NBM)は1998年にGreenhalgh Tらによって提唱された概念である。Evidence based medicine(EBM)を補完する概念として関心がもたれ、両者は「患者中心の医療を実現するための両輪である」と理解されている。今回治療に難航する2症例において、ナラティブアプローチを実践し、治療が好転した症例を経験したため報告する。【症例1】70代女性。S状結腸癌術後再発に対して化学療法中の方。腹水貯留により頻回の通院が困難となったため訪問診療も併診となった。腹水コントロールは良好となるも、化学療法への不安が絶えず、継続に難色を示すためナラティブアプローチを実施。化学療法のメリットデメリットや副作用への対処法、不安への傾聴を行っていくうちに以前より前向きに治療を受けることができた。【症例2】60代女性。X-3年に右大腿部膿瘍のため切開排膿を施行。その後リハビリへの意欲がなく、ADL改善しないが患者希望のため自宅へ退院、訪問診療を開始とした。リハビリに消極的であり、筋拘縮による慢性的な腰痛を認めるためナラティブアプローチを行った。リハビリへの抵抗は人間関係への不安、「リハビリをしろ」と言われることへのストレスがあることが判明した。リハビリの重要性を説明したうえ、休むことの必要性や関係性が築けている理学療法士が行う約束などを話したところ「リハビリを再開したい」と申し出があった。その後少しずつリハビリを継続し、腰痛も改善した。【考察】患者個人の経験・物語である「病い」と、医療者によって構築された医学の物語である「疾患」の2つの側面をすり合わせ、共有することによって、治療を進めた。それにより通常の診察を行うだけでは聞くことができない「患者の物語」を聞くことが可能となり、治療に難航していた症状を解消することができた。