講演情報

[P1-124]難病患者による中学校でのキャリア教育授業~在宅患者の社会的役割の再発見と当事者の語りがもたらす意義~

田中 利枝, 木村 文音, 平田 節子, 増井 法子, 奥野 雄大 (医療法人かがやき)
【はじめに】
在宅患者のQOL向上において、社会との繋がりや役割の再発見が重要である。当法人は在宅医療を担う専門機関として、自治体のキャリア教育推進事業の委託を受け、公立中学校にて「病気や障害を持っていても幸せに生きられる社会づくり」をテーマとした全三回の授業を実施した。今回、講師で登壇した難病患者の事例を通じ、在宅患者の潜在的な社会的役割を再発見する意義を報告する。なお、本報告について本人の同意を得ている。

【症例】
対象は脊髄性筋萎縮症(SMA)Ⅰ型の20代男性A氏。訪問介護等を利用し独居、在宅就労や音楽活動を精力的に行う。外部講演歴はあるが、一般中学校は初登壇であった。 授業ではA氏が車椅子生活を講話し、生徒がA氏の生活を便利にする道具を試作・提案するワークショップを実施。当初A氏は依頼に戸惑いがあったが、実施後は「一般中学校で話すのは初の経験であり、今後も繋げていきたい」と前向きな意欲を示した。また生徒の問いに、A氏が「ある日、友達がヘルパーという関係性に変わってしまったことが辛かった」と吐露。この生の語りは、障害の有無を問わず、一人の人間として社会に存在する尊さを生徒が深く考える機会となった。教員からは「生徒が病気・障害の人を助ける対象ではなく、同じように生きていくことが大切だと考え方の変化が見られた」との所見を得た。

【考察】
本事例は、在宅患者が自らの経験を次世代に伝え、自身の価値を教育への貢献として再発見する貴重な機会となった。新たな場での講演はA氏の自己肯定感を高め、ウェルビーイング向上に寄与したと考える。医療機関が患者の個性を把握し教育現場等と連携、潜在的な役割を見出し社会と接点を持つことは生きがいを支える上で重要である。また有償事業であった点は、活動の持続可能性と社会参加を継続する上で意義深い。患者当事者・生徒との対話は、双方の深い学びに繋がることが示唆された。