講演情報

[P1-125]暮らしの保健室における活動報告
-地域住民のエンパワメント向上と役割創出に着目して-

伊丹 知子 (医療法人自由会 こうなんクリニック)
【はじめに】
多死社会や超高齢社会が加速する中、医療・介護制度の維持や労働力不足、社会保障費の増大は深刻な課題である。これに対し、健康寿命の延伸とともに、単身世帯の孤立や生活困窮といった地域課題を住民自らが解決できる「つながりと力」を育むことが急務となっている。当院では医療機関としての地域貢献を模索し、2024年6月に暮らしの保健室を開設した。本報告では、活動を通じた地域住民との交流および、そこから得られた知見について述べる。
【活動内容】
開所当初は法人職員による「よろず相談」を主軸としたが、地域住民からの提案を積極的に取り入れることで活動を順次拡大した。現在は、住民による自主的なサークル活動や地域の有識者によるボランティア相談会、不定期開催の「誰でも食堂」など、曜日ごとに多様なプログラムが定着している。活動初期は少人数であったが、現在は1ヶ月の延べ利用者が260名に達している。 不定期開催の「誰でも食堂」では、有志のボランティアと協働して安価で50食を提供し、独居高齢者の孤食防止や多世代交流の場となっている。保健室の利用者からは「外出の機会が増え、笑顔を取り戻した」との声が聞かれ、活動を提案した住民からは「自分たちで作り上げる達成感」や「自己肯定感の向上」を示唆する発言が認められた。
【考察】
住民の「やりたい」という主体性を尊重し、交流の場を提供するプロセスは、高齢者の「役割」の創出に寄与したと考えられる。人と交流し、役割を持つことは、生活の活性化だけでなく、自己の可能性や課題に気づき、問題解決への動機付けや生活行動の変容を促す「個人レベルのエンパワメント」向上に繋がっていた。 今後は、この個人の変化を地域全体の課題解決能力へと昇華させ、「地域エンパワメント」の構築を目指した活動の継続が必要である。