講演情報
[P1-164]ALS患者の「生きたい」を支える在宅医療支援
~延命の葛藤を経て、本人と家族が取り戻した日常~
渡邉 恵理, 矢野 利章, 荒井 佐由美 (しんあいクリニック)
【はじめに】ALS患者における人工呼吸器装着の意思決定は本人と家族に深い葛藤と心理的負担を伴う。本症例では延命を望みながらも本心を言い出せなかった患者が、訪問診療と多職種支援のもとで生活の安定と生きる喜びを再構築していく過程を振り返り在宅医療支援の役割を考察する。
【症例】40代女性。ALS(球麻痺型)と診断され、翌年には通院困難となり訪問診療が開始された。呼吸器装着に対して夫が否定的な発言をしているのを知り延命を希望しながらも本心を言い出せずにいたが、病状が急速に悪化し医師との話し合い中に心肺停止し呼吸器装着へ至った。装着後は様々な不安や強い依存が出現し、夫の介護負担は限界に達した。家庭内の緊張が幼い娘にも影響を及ぼし、粘り強い行政交渉により24時間対応ヘルパーの導入が実現した。本人との意思疎通が困難となり、訪問診療時は訪問看護師とヘルパーが同席し本人の訴えや生活の問題について情報共有し対応を検討した。介護負担や不安軽減のため低定量自動持続吸引器と自動カフ圧調整器を導入し生活は安定したが、娘に対する関心が薄れ、現在の姿を見られたくないと外出を拒否していた。やがてALS患者の集いへの参加を契機に意識が変化し、家族旅行が実現した。夫婦関係にも改善がみられ、現在では胃瘻から少量のビールを注入し、一緒に晩酌を楽しむ日々を過ごしている。
【考察】本症例では、夫婦間の意見の相違と急速な病状進行が意思決定を困難にした。呼吸器選択には十分な時間が必要とされるが、時間的猶予のなさが更に患者を追い詰める要因となった。装着後の不安や依存には脆弱な家族関係が影響していたが、支援者が患者の想いを受け止め、行政と連携して生活環境を整えることで安定した生活を取り戻し、生きる喜びを再構築出来た。在宅医療は医療のみならず心理・社会的支援を通じて「その人らしい生活」を支える基盤として重要な役割を担っている。
【症例】40代女性。ALS(球麻痺型)と診断され、翌年には通院困難となり訪問診療が開始された。呼吸器装着に対して夫が否定的な発言をしているのを知り延命を希望しながらも本心を言い出せずにいたが、病状が急速に悪化し医師との話し合い中に心肺停止し呼吸器装着へ至った。装着後は様々な不安や強い依存が出現し、夫の介護負担は限界に達した。家庭内の緊張が幼い娘にも影響を及ぼし、粘り強い行政交渉により24時間対応ヘルパーの導入が実現した。本人との意思疎通が困難となり、訪問診療時は訪問看護師とヘルパーが同席し本人の訴えや生活の問題について情報共有し対応を検討した。介護負担や不安軽減のため低定量自動持続吸引器と自動カフ圧調整器を導入し生活は安定したが、娘に対する関心が薄れ、現在の姿を見られたくないと外出を拒否していた。やがてALS患者の集いへの参加を契機に意識が変化し、家族旅行が実現した。夫婦関係にも改善がみられ、現在では胃瘻から少量のビールを注入し、一緒に晩酌を楽しむ日々を過ごしている。
【考察】本症例では、夫婦間の意見の相違と急速な病状進行が意思決定を困難にした。呼吸器選択には十分な時間が必要とされるが、時間的猶予のなさが更に患者を追い詰める要因となった。装着後の不安や依存には脆弱な家族関係が影響していたが、支援者が患者の想いを受け止め、行政と連携して生活環境を整えることで安定した生活を取り戻し、生きる喜びを再構築出来た。在宅医療は医療のみならず心理・社会的支援を通じて「その人らしい生活」を支える基盤として重要な役割を担っている。
