講演情報
[P1-169]“予後を知っている介護”の負担と支援ニーズ
―夫の看取り経験が長男の介護に与える影響―
古野 友梨, 久保 敦義, 比山 昌子 (あしたの在宅クリニック)
【はじめに】 脊髄小脳変性症(SCA)は全症例の約30%が遺伝性で、家族内で複数人が発症することも少なくない 。介護者は長期間の重層的な介護を経験するが、過去の看取り経験が現在の介護に与える影響の報告は少ない 。本報告では、夫を看取り、長男を在宅介護中で、次男の発症も示唆されている一事例を通じ、主介護者へのインタビューをもとに、予後を知る介護者の特徴と支援ニーズを検討する 。
【症例】 対象は70代女性。9年前に夫をSCAで看取り、現在40代の長男(SCA、要介護4)を主介護している 。昨年、次男にもSCAの兆候が示唆された 。母親へのインタビューにおいて、彼女は長男の症状に対し「夫の時と同じだ」「悩んでも仕方がない」と現状を冷静に受容していた 。むしろ夫の闘病経験から早期介入の重要性を熟知しており、次男に早期受診を促すなど過去の経験を介護資源として能動的に活用していた 。一方、最大の課題は「自身が介護不能となった後のケアの継承」であった 。次男の発症疑いにより家族内継承が困難となり、将来の手続き代行を含めた社会的支援の必要性を自ら語っていた 。在宅医療チームが家族の歴史を理解し、彼女を熟練したパートナーとして尊重していることが介護継続の支えとなっていた 。
【考察】 本事例の母親は、過去の経験から疾患経過を予測し早期介入を促す「ケアの主体者」であった 。本事例において、過去の看取り経験は単なる喪失体験に留まらず、「現在の介護の指針」として機能している側面がある 。しかし、介護者の精神的強靭さに依存するだけでは、家族内ケアの限界時に対応が遅れる危険がある 。次世代への継承が困難な場合、成年後見制度や入所検討など、生活背景に基づいた早期のACPを多職種で具体化していく支援が不可欠である 。
※対象者に趣旨を説明し同意を得た上で、匿名化に配慮した(倫理カテゴリーⅤ)。
【症例】 対象は70代女性。9年前に夫をSCAで看取り、現在40代の長男(SCA、要介護4)を主介護している 。昨年、次男にもSCAの兆候が示唆された 。母親へのインタビューにおいて、彼女は長男の症状に対し「夫の時と同じだ」「悩んでも仕方がない」と現状を冷静に受容していた 。むしろ夫の闘病経験から早期介入の重要性を熟知しており、次男に早期受診を促すなど過去の経験を介護資源として能動的に活用していた 。一方、最大の課題は「自身が介護不能となった後のケアの継承」であった 。次男の発症疑いにより家族内継承が困難となり、将来の手続き代行を含めた社会的支援の必要性を自ら語っていた 。在宅医療チームが家族の歴史を理解し、彼女を熟練したパートナーとして尊重していることが介護継続の支えとなっていた 。
【考察】 本事例の母親は、過去の経験から疾患経過を予測し早期介入を促す「ケアの主体者」であった 。本事例において、過去の看取り経験は単なる喪失体験に留まらず、「現在の介護の指針」として機能している側面がある 。しかし、介護者の精神的強靭さに依存するだけでは、家族内ケアの限界時に対応が遅れる危険がある 。次世代への継承が困難な場合、成年後見制度や入所検討など、生活背景に基づいた早期のACPを多職種で具体化していく支援が不可欠である 。
※対象者に趣旨を説明し同意を得た上で、匿名化に配慮した(倫理カテゴリーⅤ)。
