講演情報

[P1-191]終末期がん患者で、ポジティヴヘルスに基づきスパイダーネットを活用することにより、最期まで患者の希望する自宅療養を叶えられた事例

児玉 麻衣子1,2, 有田 諭1, 田中 沙織1, 紅谷 浩之1 (1.オレンジホームケアクリニック, 2.福井大学医学部附属病院がん診療推進センター)
【はじめに】
終末期がん患者において、身体的苦痛の十分な緩和が困難な場合でも、患者が望む「自宅で最期を迎える」希望をいかに支えるかは重要な課題である。今回、新しい健康の概念であるポジティヴヘルスに基づき、そのツールであるスパイダーネットを活用し、患者の価値観に沿った在宅療養の実現に至った症例を報告する。
【症例】
70歳代女性。子宮平滑筋肉腫術後、肺転移・がん性胸膜炎を再発し、20XX年Y月に化学療法を施行したが副作用強く効果も乏しいため本人希望で中止。家族のそばで過ごすことを最優先に訪問診療へ移行した。右肩〜側胸部痛に対しオキシコドンを使用したが鎮痛不良で、呼吸苦も伴うためモルヒネへスイッチした。嘔気・食欲不振に対しデキサメサゾンやPPIを用いたが改善乏しく、フェンタニル貼付剤や持続皮下注も提案したが抵抗があった。スパイダーネットでの自己評価では、身体面やいきがいが低く、心の状態や日常生活、暮らしの質で高い傾向があった。スパイダーネットを通じて、患者のいきがいを高めるためには身体面の改善が必要と考えられたが、これまでの価値観(自然なものを口にしていく、今を大事に生きてく)を変えてまでは治療等は望まないとの考えを確認でき、本人の考えを尊重し、薬剤等も変更しない対応とした。その後、身の置きどころのなさや不眠が出現し、本人の希望もありモルヒネ坐剤やジアゼパム坐剤投与となった。最期は家族に見守られ自宅にて永眠した。
【考察】
本症例では身体的苦痛の緩和に難渋し、患者は医療者の提案する治療に消極的であった。スパイダーネットによる対話により、医療者が想定したものとは異なる本人が考える苦痛や希望に触れることができ、スピリチュアルペインを含めた本人の苦痛緩和につながったと考える。ポジティヴヘルスアプローチは、終末期患者の意思決定支援および在宅療養の実現に有用と考えられた。