講演情報

[P1-192]在宅医療におけるソーシャルワーカーとチャプレンの協働~全人的苦痛への多角的アプローチ~

大友 路子, 八森 淳, 山村 薫 (つながるクリニック)
【はじめに】 当院は在宅支援診療所として、全人的な苦痛(トータルペイン)の緩和を目標に緩和ケアを提供してきたが、多職種連携の中でも「人生の意味」や「死への恐れ」等のスピリチュアルペインへの対応に困難を感じていた。そこで当院は、従来の医療・福祉専門職では介入が難しい根源的な問いに応えるためチャプレンを採用した。本報告ではソーシャルワーカー(SW)との役割比較を通じ、両職種を導入する意義と相乗効果を考察する。 【活動】 SWは生活上の困難解決や社会的苦痛の緩和、生活の安定を目指す現実的支援を主とする。対してチャプレンは、存在を深く受容しスピリチュアルな苦痛に寄り添うことを専門とする。 <事例報告>40代末期がん女性(未就学児2人、余命週単位)。本人は死後の子供を案じており、SWは夫に対し今後の生活基盤の確認と支援の了承を得るべく介入した。本人から「夫に聞いてほしい」との依頼を受け面談を実施。その1週間後に本人は逝去した。 デスカンファレンスにて、SWは「現実に切り込み、夫に本人の想いを伝え、家族の準備のきっかけを作れてよかった」と述べた。一方、チャプレンは「人知を超えた働きにより本人の魂の癒やしとなる空間が生まれ、希望を分かち合えた」と、その空間における存在の変容を評価した。 【考察】 本事例は両者の専門性の違いを明確に示した。SWは解決志向的に介入し未来の生活安定に焦点を当てたが、チャプレンは存在と感情に焦点を当て、受容と共存を通じて内面的な平安を優先した。 両職種採用のメリットは、機能的支援と存在論的支援が同時かつ独立して行われる点にある。SWが未完の課題を整理して安心感を与え、チャプレンが根源的な孤独を和らげ尊厳を支えることで、より高次元な全人的ケアが可能となる。両者が役割の違いを尊重し視点の多角性を確保することが、在宅緩和ケアの質を向上させる鍵となる。