講演情報

[P1-222]医療的ケア児者を面で支える新しい在宅医療連携
― 在宅医と救急医が協働するパステルタッグプロジェクト ―

田村 智1,中村 小百合2,向井 法子1,狩野 契2,鋤柄 稔2,丹羽 彩文3,吉田 隆俊3,茂木 健司4,藤澤 美智子5,谷 昌憲6、中川 圭1 (1. 北里大学メディカルセンター,2. シャローム病院,3. 社会福祉法人昴,4. 地域センターたいよう,5. 横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部,6. 埼玉県立小児医療センター 小児救命救急センター)
【はじめに】
医療的ケア児者の増加に伴い、移行期・成人期における在宅療養中の急変対応や入院治療体制の不十分さが、地域医療の課題として顕在化している。特に成人期では、小児科から成人診療科への移行と同時に、在宅医療と救急・入院医療の連携が断絶しやすく、患者・家族のみならず、在宅医、救急医療機関双方に大きな負担を生じている。こうした課題に対しては、既存の枠組みにとらわれない新しい取り組みとして、診療科や医療機関を越えた協働の再構築が求められている。我々は在宅医と救急医が協働し、医療的ケア児者を地域で「面として支える」連携づくりを目的に、パステルタッグプロジェクトを立ち上げた。
【活動】
本プロジェクトは、地域の在宅医と救急医が共同で主導し、見学会・講演・ディスカッションからなるセミナーシリーズを中核に展開している。2024年10月から2026年5月にかけて計5回のセミナーを開催し、特別支援学校や生活介護事業所の見学、在宅医・救急医・患者家族・福祉職・行政による討議を行った。オンライン参加を含め、これまでに延べ約500人が参加した。さらに、TraCareと連携し、気管切開患者を想定したシミュレーションコースを在宅医と救急医が合同で開催し、急変時対応を共通言語で確認した。参加者アンケートでは、救急・入院対応に対する理解度の向上や連携への心理的ハードル低下が示唆された。
【考察】
本プロジェクトの意義は、成人救急医が在宅医と並走し、移行期・成人期医療的ケア児者の課題を共有する新しい連携の形を提示した点にある。セミナーや合同シミュレーションを通じた関係性構築は、連携を理念にとどめず実践へと発展させる基盤となり得る。今後は、こうした新しい取り組みを地域に実装・定着させ、年齢や診療科に依存しない切れ目のない在宅医療体制の再設計を目指したい。