講演情報

[P1-77]急性期病院で切断適応と判断された感染性右踵部重度褥瘡が、看取り目的の在宅医療から多職種連携により治癒に至った一例

間所 俊介1, 佐々木 昭仁2, 夏堀 龍暢1, 武藤 真祐1 (1.鉄祐会 祐ホームクリニック吾妻橋, 2.訪問看護ステーションしらひげ)
【はじめに】感染を伴う重度褥瘡に対し、医学的適応である切断術を患者が拒否した症例を経験した。当初、治癒は困難と予測されたが、多職種による包括的アプローチにより治癒に至ったため報告する。【症例】73歳男性。右踵部褥瘡を認めるも病院受診はしなかった。体動困難となりA病院へ搬送され、褥瘡感染および敗血症と診断された。下肢切断・入院加療を勧められたが、患者は「切断するくらいなら死んだほうがいい」と拒否し、自宅看取りを希望し訪問診療を開始した。初診時、右踵部に骨露出・壊死組織を伴う褥瘡(DESIGN-R:45点)を認めた。全身状態不良で経口摂取も進まず、予後不良が示唆された。目標を緩和ケアと感染制御とし、鎮痛管理、デブリードマンと抗生剤投与を開始した。主治医・訪問看護師・ケアマネジャーが連携し、連日の洗浄処置や環境調整を含む包括的支援を行った。特に、主担当看護師による継続的な訪問と心理的支援が治療の鍵となった。当初は治療に拒絶的であったが、同看護師が根気強く訪問し、患者の想いに寄り添い続けたことで、徐々に信頼関係が醸成された。こうした心理的安定が治療への意欲につながり、食事量増加やADL拡大などの生活環境の改善とともに肉芽形成に寄与したと考えられる。その結果、全身状態は持ち直し、介入から10ヶ月で上皮化した。【考察】本症例は、医学的には予後不良と考えられた。しかし、Bio-Psycho-Socialモデルの視点から、訪問看護師による継続的な心理的支援と、在宅チームによる生活環境調整を組み合わせた包括的支援を行った。その結果、治療への意欲が向上し、栄養状態やADLの改善を通じて治癒に至ったと考えられる。看取りを想定した重症例でも、多職種が連携し患者の治療意欲を引き出すことで良好な転帰が得られる可能性が示唆された。本報告は倫理カテゴリーⅤに該当する。倫理委員会の承認を受けている。