講演情報
[P1-80]開業初年度の在宅療養支援診療所における在宅看取りの実際― 多職種連携の積み重なりが支えた約80例の活動報告 ―
熊井 康子, 沖 祥子, 野島 若葉, 渡邊 砂織, 吉田 寛子 (まほろの在宅クリニック)
【はじめに】在宅療養支援診療所における在宅看取りは、診療所単独では成立せず、地域の多職種・多事業所による継続的な関与を前提として成り立つ。特に新規開業初期の診療所では、地域との関係性や連携体制が十分に整わないまま診療を開始することも多く、在宅看取りへの対応は容易ではない。本報告では、開業初年度における在宅看取りの実際を振り返り、どのような関わりの積み重なりが看取りを支えていたのかを明らかにする。【活動】2024年1月に新規開業した在宅療養支援診療所において、初年度に訪問診療を開始した患者は約180名であった。そのうち、主に居宅を中心として約80例が在宅看取りに至った。診療は訪問診療を軸に、訪問看護、訪問薬剤管理、ケアマネジャーなど複数の職種・事業所が関与する体制のもとで継続された。在宅看取りに至った症例では、がん末期・非がん症例を問わず、診療所の関与に加え、多職種・多事業所による日常的な関与が重なり合う形で支援が行われていた。看取りに至る過程では、急変時対応や療養方針の共有などを通じ、日常診療の中で連携が積み重ねられていた。【考察】開業初年度という連携基盤が十分に成熟していない状況においても在宅看取りが成立していた背景には、診療所が単独で看取り対応を担うのではなく、診療開始早期から多職種・多事業所が日常的に関与し、それぞれの役割を担う関係性が形成されていた点が挙げられる。がん・非がん、同居・独居を問わず、多職種の関与が重なり合いながら療養支援が継続されていたことが、在宅看取りに至る過程を下支えしていたと考えられた。本報告は単施設の実践の振り返りであり一般化を目的とするものではないが、在宅看取りを特別な対応として位置づけるのではなく、日常診療の延長として多職種・多事業所との関係性を積み重ねていく視点は、新規開業の有無を問わず共有可能な示唆を含むと考える。
