講演情報

[P1-81]セルフネグレクト状態からの回復支援を行った一事例~医師の立場から

加藤 昌昭1, 川内 裕子1, 菊地 美奈実2 (1.桜蘭会M&T在宅クリニック, 2.仙台市太白区障害高齢課)
【はじめに】
家族喪失、医療不信、孤独、身体機能の低下などが重なると、生活を維持する意欲を失いセルフネグレクトに陥ることがある。本例では、家族性難病による家族の死別と過去の介護経験から“どうなってもいい” という深い諦めを抱え、支援を拒否していた本人に対し、どのような関わりがBADL (基本的日常生活動作)の回復に繋ったかを考察した。
【症例】
50代男性。母親、妹に類症。母親は気管挿管、人工呼吸管理にて長期在宅療養し70代で死亡。妹は40代発症、50代で死亡。いずれも脊髄小脳変性症と診断。妹と同時期に介護担当していた父親も死亡し以後独居生活。X-1年頃よりふらつき、歩行障害が出現。母妹と同症を考えたが医療機関受診はせず。X年4月、自宅で転倒、以後起立歩行困難となった。隣人から保健師に相談し、X年7月、訪問診療開始。 初診時、顕著なるい痩。四肢体幹失調、軽度構音嚥下障害、両下肢対麻痺を認めた。自宅内這って移動していたことにより手足、背部に挫創、褥瘡を認め、臀部右側に小児頭大の腫脹、一部潰瘍を認めた。本人病院受診拒否強く自宅で可能な範囲の検査(採血、診察)のみ施行、脊髄小脳変性症による失調(四肢体幹)と、脊髄障害による対麻痺、臀部蜂窩織炎と診断し内服抗生剤、鎮痛剤による治療、訪問看護による褥瘡処置、栄養管理を開始した。 継続支援の結果、看護師同行にて病院受診、頭部CTにて小脳萎縮。全身Xp、CTにて多発肋骨骨折、骨盤骨折、脊髄損傷、の診断確定。遺伝子検査にて遺伝性脊髄小脳変性症(SCA8)診断。難病、介護保険、身体障害の申請を行った。
【考察】
 初期、家族性難病の介護経験と家族喪失による孤独から医療不信が強くセルフネグレクト状態であった。隣人、保健師、訪問看護、訪問診療と多職種の介入により生活基盤の確保ができ、本人の意識も変化してQOL向上につながった。