講演情報

[P1-83]セルフネグレクト状態からの回復支援を行った一事例~看護師の立場から

川内 裕子1,2, 加藤 昌昭1, 菊地 美奈実3 (1.桜蘭会M &T在宅クリニック, 2.桜蘭会訪問看護ステーションそれいゆ, 3.仙台市太白区保健福祉センター)
【はじめに】
家族喪失、医療不信、孤独、身体機能の低下などが重なると、生活を維持する意欲を失いセルフネグレクトに陥ることがある。本事例では、家族性難病による家族の相次ぐ死別と過去の介護経験から“どうなってもいい”という深い諦めを抱え、支援を拒否していた本人に対し、どのような関わりがBADL(基本的日常生活動作)の回復に繋ったかを考察する。

【症例】
50代男性、家族性難病により母・妹の死別及び同時期の父の死去により、強い孤独感を抱えていた。過去に家族が受けた治療が期待通りに進まず、医師の説明と結果の乖離を経験したことから、医療不信が強かった。隣人が本人の命の危険を察し、保健師に相談したことが訪問診療の契機となった。最初に本人宅を訪問した際、食事への関心が乏しく家も乱雑で、セルフネグレクト状態であった。身体的にも、多発褥瘡と骨折による臀部の腫脹、高熱を呈し、生命に関わる危険な状況であった。
初期には診療拒否が見られたが、看護師が以前、母親を支援していた縁を伝えたところ、支援を受け入れ、その後の介入に繋がった。我々チーム内(訪問看護、訪問診療)では、本人の意思を尊重し、拒否行為を避け、受け入れを待つ姿勢を共有した。その後、連日の訪問看護で褥瘡処置と栄養確保を優先し、食事提供も生命維持のため柔軟に対応した。継続的支援の結果、看護師同行下での病院受診が可能となり、脊髄小脳変性症、多発骨折、脊髄損傷の診断が確定。最終的には、難病・介護保険申請が行われBADLの回復、“どうなってもいい”との思いも消失した。

【考察】
家族喪失による孤独感と介護経験から生じた医療不信がセルフネグレクト状態を招いていた。本人の意思を尊重し無理な介入を避けながら、柔軟に対応した事が、心を開く契機となり、BADLの回復に寄与した。今後さらに多職種が連携して関わることで、QOLの向上に繋がると考えられる。