講演情報

[P1-88]粉砕ゼロへの挑戦〜薬剤師介入がもたらした施設服薬管理の変革

山口 奈々1, 寺田 大輝1, 羽賀 正晴1, 関下 禅美2, 山本 健3, 廣原 正宜3, 串田 一樹3 (1.龍生堂薬局大久保店, 2.株式会社龍生堂本店調剤事業部, 3.昭和薬科大学)
【目的】 高齢者施設では嚥下機能に問題がない患者にも拒薬や介助負担を理由に薬剤粉砕が行われるケースがしばしば経験される。粉砕は効果減弱・副作用リスク・食事拒否などの不利益を引き起こす可能性があるため慎重な判断が必要である。本研究では、薬剤師の介入と他職種連携により、粉砕を回避し適切な服薬方法へ改善できるかを検証した。【方法】 当薬局が新たに担当した有料老人ホーム入所者全11名を対象とし、2024年7月〜12月の薬剤服用歴から粉砕状況と介入内容を分析した。薬剤師は診療同行、職員への聞き取り、服薬場面確認を通じ、錠剤への切替提案、服薬ゼリー導入、職員教育を実施した。本研究はソーシャルユニバーシティ薬剤師生涯学習センター倫理委員会の承認を受け実施した。(承認番号:SU0067)【結果】 介入前は全員が全薬剤粉砕を受けており、食事への混和が日常的に行われていた。嚥下機能は医師・看護師の評価で全員問題なく、粉砕は「飲ませやすい」「拒薬時に混ぜられる」という施設内の慣習に基づいていた。職員からの「粉砕に戻したい」との訴えに対し、薬剤師が繰り返し説明を行った結果、37剤が錠剤へ切り替わり、全員が粉砕を中止した。その後のフォローアップで服薬トラブルや粉砕への再移行事例は認めなかった。【考察】 「自分で飲めない=粉砕」という認識は在宅現場でよくみられ、薬剤師介入がなければ改善されにくい。粉砕は介助効率に寄与する一方、患者のQOL低下と薬学的リスクが大きい。薬剤特性の理解と粉砕リスク説明、適切な服薬方法の提案は薬剤師の専門性であり、薬物治療の質向上に不可欠である。【結論】 薬剤師による継続的な介入と多職種連携により、施設入所者全員の粉砕中止と適切な薬物治療の確立が実現された。薬剤師の専門的関与が施設利用者の安全で質の高い薬物治療を実現する鍵であることが示唆された。