講演情報

[P1-90]看多機と連携した終末期輸血の意思決定支援:QOL指標を用いた骨髄線維症在宅療養の一例

栗林 泰子, 濱谷 弘康 (社会医療法人河北医療財団あいクリニック)
【はじめに】血液疾患患者では終末期においても輸血が継続されることが多く、その中止判断は血液専門医にとっても難しい。特に心不全を併存する場合、輸血は症状緩和と循環負荷の両側面を有し、治療選択は一層複雑となる。また在宅輸血が普及する中、適切な適応評価、副作用コントロール、丁寧な意思決定支援の重要性が指摘されている。本症例では、在宅医療と看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)が連携し、QOL指標を用いた意思決定支援を行った経過を報告する。【症例】80代男性、骨髄線維症。腫瘍熱と体液貯留を認め、フェダチニブ内服下でも輸血依存が持続し終末期と判断された。要介護状態となり看多機の利用を開始、看多機職員に対し血液難病と輸血に関する勉強会を複数回実施した。訪問診療で2週毎の赤血球輸血を継続したが、輸血後の自覚的改善は乏しく、NT-proBNP高値、低血圧、著明な疲労感から低心拍出性心不全が全身状態と予後を規定していると評価した。EQ-5D-5L簡易版およびFACIT-FatigueによるQOL評価では、輸血による改善は限定的であった。介入2か月後に寝たきりとなり、輸血継続について本人と妻に説明した。本人は「どちらでもよい」と述べ、妻は継続を希望した。施行当日、低血圧下でSpO₂低下を認め、輸血後循環過負荷と判断し在宅酸素療法を導入した。看多機と協働し苦痛最小限のケア方針とし、施設内で看取りとなった。【考察】多職種が密に情報を共有し、価値観の揺れを含めて支援したことで、倫理的葛藤を伴う意思決定過程を継続的に支えることができた。本症例は、終末期輸血において在宅医療が多職種連携とQOL指標を活用することで、より実態に即した意思決定支援を提供し得ることを示した。今後、QOL指標を活用した輸血中止の意思決定支援について、在宅医療の現場で症例を蓄積し、実践的知見として検討していきたい。