講演情報

[SY15-2]在宅医療における意思決定支援について ~意思決定支援に関する我が国の動向を踏まえて~

平原 佐斗司 (東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所)
1987年国立島根医大卒、同第2内科、六日市病院、平田市立病院、帝京大学病院第2内科を経て、梶原診療所で在宅医療に従事。現在、東京ふれあい医療生活協同組合研修・研究センター長、同オレンジほっとクリニック地域連携型認知症疾患医療センター長。日本在宅医療連合学会代表理事、日本認知症の人の緩和ケア学会理事長、日本エンドオブライフケア学会副理事長。総合内科専門医、在宅医療専門医・指導医、気管支鏡専門医、アレルギー専門医。東京科学大学、聖路加国際大学臨床教授。編著:在宅医療テキスト1~3版(勇美記念財団)、チャレンジ在宅がん緩和ケア、チャレンジ 非がん疾患の緩和ケア、心不全の緩和ケア、非がん性呼吸器疾患の緩和ケア、認知症の緩和ケア、エンドオブライフケア、腎不全の緩和ケア(南山堂)、「認知症の人に寄り添う在宅医療」(クリエイツかもがわ)、在宅医療のすべて(中山出版)、認知症plus 緩和ケア、エンドオブライフケア学(看護協会出版会)、医療と看護の質を向上する認知症ステージアプローチ入門、明日の在宅医療(第3,4,6巻)、緩和ケアと看取りの訪問看護、認知症プライマリケアまるごとガイド(中央法規)等
近年、我が国においても終末期医療の議論の中でACPの重要性が認識されている。しかし、個人の自己決定を強く重視する欧米のACPと、日本の文化的背景には乖離があることが指摘され、近年日本人の自律性や集団的決定の傾向を考慮した「日本型ACP」が提唱されている。2019年の日本老年医学会による定義では、ACPを単なる決定の場ではなく、「信頼関係のある医療・ケアチームの支援を受けながら、本人が将来の生き方や医療・ケアについて考え、家族等と話し合うプロセス」として位置づけている。また、欧米型が「自らが決めること」を重視するのに対し、家族など集団の意思を重んじる日本人の特性を考慮し、医療者には家族を含めた対話を早期から促すことが求められている。同時に、患者が意思を表明するまでの過程に医療者が深く関わり、その意思形成を継続的に支援していくことが重要視されている。また、ACPはEOL期だけでなく、あらゆる健康状態にある人を対象とする。その実践は、地域住民を対象とした第1段階(Advance Life Planning: ALP)、疾病や障害を持つ人への第2段階、そして終末期(End of Life: EOL)にある人への第3段階へと、健康状態や疾病ステージに応じて継続的に行われるべきものである。この継続的なプロセスの中で、本人の意思が紡がれていくことが理想とされる。意思決定に関する法律が存在しない日本においては、関連する5つのガイドラインを熟知し、俯瞰的に活用することが求められる。支援の核心は、医療者側の「最善の利益」から、本人の「意思と選好」を最優先するパラダイムシフトにある。特に在宅医療は、その人らしい暮らしと価値観に基づいた決定を支える場であり、意思決定支援はその要となる。在宅医療導入時はACPを開始する最良のタイミングであり、専門職はその重要性を深く認識する必要がある。