講演情報

[SY15-3]認知症の人の意思決定支援における支援者の姿勢と実践的技術の習得 ―支援者向け研修カリキュラムの成果と考察―

柳澤 克哉 (よしき往診クリニック)
【演者略歴】
2015年 藍野大学 医療保健学部卒業
2015年 大阪医科薬科大学附属病院 神経内科
2018年 大阪医科薬科大学附属病院 循環器内科
2019年 医療法人双樹会 よしき往診クリニック
【目的】 認知症基本法の施行に伴い、本人の意思尊重と意思決定支援の重要性が増している。本カリキュラムは、単なる知識の習得に留まらず、支援者が本人の力を引き出し伴走するための「姿勢」と「具体的な支援技術」を習得することを目的として実施された。
【受講者による主な学び】 受講者は、講義と事例検討を通じて、主に以下の3点で深い学びを得た。
①支援者の基本姿勢:主観的事実への共感と価値観の理解支援において、客観的な事実以上に、本人が体験している「主観的事実」に共感することが信頼関係構築の鍵であることを学んだ。また、エリクソンの発達段階等の理論を用い、人生の時期によって変化する価値観と、生涯を通じて「変わらない価値観」を見極める視点を養った。これにより、家族の意向に頼りすぎず、本人と真摯に向き合う重要性を再認識した。
②評価の質的転換:数値から「支え方」の分析へ MMSE等の認知機能検査について、総得点という数値のみで判断するのではなく、「どのような誤答をしたか」という質的傾向から、本人の残存能力や必要なサポートを分析する手法を習得した。また、会話形式の評価(CANDy)等を通じ、日常の関わりの中で本人の意思決定能力を多角的にアセスメントする重要性を学んだ。
③実践的な支援プロセスの構築 意思形成・表明・実現というプロセスを理解し、医療同意能力(MacCAT-T)の評価要素を具体的な言葉がけに応用する方法を学んだ。特に、多忙な臨床現場においても、支援ステップを分割して段階的に関わることが実践において有効であると学んだ。
【結論】 本カリキュラムを通じ、受講者は認知症の人を「できない人」としてラベリングするのではなく、意思決定の土台を支える「伴走者」としての姿勢を確立した。この学びは、在宅や病院といった多様な現場における意思決定支援の質を向上させる一助となると期待される。