講演情報
[CLS1-1]補綴装置と上皮性付着 〜基礎研究に基づく臨床的アプローチ〜
*熱田 生1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座クラウンブリッジ補綴学分野)
キーワード:
歯冠補綴材料、生物学的幅径、上皮性付着
歯冠補綴治療は歯科臨床において不可欠であり,その設計や材質,接着法などの工夫は,補綴装置周囲での炎症や二次カリエスのリスクを低減するために重要である.その鍵となるのが,補綴装置周囲における上皮性付着の確立である.天然歯では,生物学的幅径が口腔内からの感染を防ぐ役割を果たし,エナメル質に対する上皮付着と歯肉の圧迫による防御機構が機能する.また,一般的に歯冠補綴治療では,フィニッシュラインが歯肉溝内に留められており,エナメル質における上皮性付着を残すように形成されており,そのため天然歯と同様の封鎖性が維持されている.しかし,形成が縁下に及ぶ症例では,エナメル質が削合されることで上皮付着が破壊され,また歯肉退縮症例では接着対象がセメント質となり,その接着性が著しく低下すると考えられる.このような症例では,補綴装置に接する上皮の付着性が低下し,支台歯の予後に影響を及ぼす可能性があるため,適切な対応が求められる.本発表では,補綴装置と軟組織の関係を,基礎研究のエビデンスに基づいて考察し,臨床応用の可能性を提案する.装着のタイミング,材料選択,形態の工夫を通じ,補綴装置周囲に上皮付着を獲得する方法について議論したい.