講演情報
[CLS2-1]予後を予測した部分床義歯の設計
*伊藤 誠康1 (1. 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座)
キーワード:
部分床義歯、生体追従性、クラスプ修理
超高齢社会にある我が国において,8020達成者は過半数に達したが部分床義歯および全部床義歯の装着者の割合は加齢とともに増加傾向にある.その反面,高齢者の残存歯数は増えたものの歯周疾患等の条件の悪い残存歯を有する欠損歯列患者も増えていることが推察される.義歯の機能を長期間維持することは高齢者のQOLに大きく影響するため,術前の治療計画においては,患者の口腔内外の状況,治療に対する要望など十分に傾聴し,適切な前処置を行うことが重要である.部分床義歯の設計は,義歯の動揺の最小化,衛生的配慮,剛性化,生体追従性といった原則を考慮する必要があり,義歯製作にあたり現状の問題点を患者と共有し,今後の治療計画に対して十分な理解を得た上で治療を進めることが大切である.そのため,現状に対する治療計画のみではなく,中長期的に将来の口腔内の予測される変化を推測し,加味した上で,将来起こるであろう変化に対する治療計画も俯瞰し,患者と共有しておくことが肝要と考えている.また,レジン床義歯のクラスプ破損時の交換修理は,日常診療で遭遇する修理の一つである.クラスプが破損した際,破損した義歯の設計を考慮せず,クラスプの支台歯の部分のみを印象採得し,交換用のクラスプを製作した場合,クラスプの脚部が床内のリンガルバーの維持格子部や補強線部と干渉し,難儀する場合がある.本講演では,抜歯等の予後予測を考慮した設計やクラスプ交換修理における一工夫について症例を交えてディスカッションしたい.