講演情報

[CLS2-2]咬合・咀嚼と有床義歯補綴診療の再考

*坂口 究1 (1. 北海道大学大学院歯学研究院口腔機能学分野口腔機能補綴学教室)
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キーワード:

有床義歯補綴診療、咀嚼機能、咬合

健康や生活の質に関する国民意識の向上に伴い,治療効果を客観的に評価して,患者さんに呈示する医療が一般化しています.有床義歯補綴診療の主な目的が,咀嚼機能の回復とその維持であることから,治療前の咀嚼機能の障害の程度,治療後の咀嚼機能の回復と維持の程度を客観的に評価して,患者さんに呈示するためには,咀嚼機能の検査が必要になります.検査から得られるデジタル画像や数値化された情報は,患者さんと共有することにより,有床義歯補綴治療とその効果について,患者さんの理解をより促進し,かつより信頼を獲得することも可能となります.さらに,検査に裏付けられた適切な指導と管理を行うことにより,残存組織の保全や咀嚼機能の回復と維持による健康増進にも寄与できるものと考えられます.一方,咀嚼機能を支え,かつ補綴歯科治療の成功には欠かせない要素である「咬合」については,これまで一世紀以上にわたりさまざまな概念が提唱され,議論が続けられてきました.しかしながら,「複雑でわかりにくい」などといった意見も依然として多く聞かれるように思われます.
 本講演では,補綴学的咬合理論の歴史的変遷を簡潔に概観した後,これまでの咬合理論に関する臨床的意義を再考するとともに,今後求められる咬合論の方向性とそれに基づく治療法について考察します.そのうえで,有床義歯補綴診療における咀嚼機能評価の量的目標の設定を目指して,私が日常臨床で実践している咬合の検査・評価法ならびに治療法と,それらの今後の展望について解説させていただきます.