講演情報

[CLS2-3]部分床義歯における力への対応を考える

*依田 信裕1 (1. 東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野)
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キーワード:

力のコントロール、部分床義歯、生体力学

補綴装置の重要な役割は,咬合の回復による咀嚼や嚥下等の機能の改善・保全にあり,機能時の力が密接に関与する.すなわち,部分床義歯を長期的に安定して機能させるためには,機能時に部分床義歯に加わる力,さらにその力の作用による生体反応を理解することが重要である.しかし,部分床義歯の機能時の挙動を制御し,生体に加わる力を適切にコントロールすることは容易ではない.顎口腔系では,機能時,顎筋を力源とし,歯列上に咬合力や咀嚼力,顎関節に顎関節負荷が発現し,生体内各所にメカニカルストレスが生じる.歯の欠損等で力学的なバランスが崩壊し,顎口腔系の一部に過度なストレスの集中が生じた場合に,疼痛や炎症,顎骨の吸収が生じると考えられている.部分床義歯はこの力学的なアンバランスを回復する役割を担うことが求められるが,その設計が不適切であれば,意に反してアンバランスを助長し,却ってストレス集中を引き起こしかねない.すなわち,機能時に加わる力による部分床義歯の動揺を最小限にすることが重要であり,症例毎に受圧因子や加圧条件を整理し,機能時の部分床義歯の三次元的挙動を的確に予測した上で,支持・把持・維持という基本機能を適切に考慮した設計を施すことが肝要となる.本講演では,部分床義歯における力への対応を考慮するにあたり,顎口腔系における生体力学的な基礎知識,さらに義歯の動きを制御するための設計の要点について,私どもがこれまで行ってきた部分床義歯に関わる口腔内荷重の実測データを紹介しながら整理する.